We Support GRIEF グリーフワークかがわグリーフワークかがわ
Home お問合せ
概要
理事長の言葉
あゆみ
公開セミナー
グループミーティング
電話相談
学習会
設立記念行事
研修
シンポジウム
ニュースレター
雑誌掲載記事
書籍のご案内
会員募集
リンク

NPO法人グリーフワークかがわ設立記念シンポジウム終了あいさつ

2010年12月5日,NPO法人グリーフワークかがわ設立記念シンポジウム「喪失と悲嘆を超えて−ライフイベントをめぐる心の危機を克服するための−」を終了いたしました。
本シンポジウムは,2009年11月にグリーフワークかがわが特定非営利活動法人の認証を取得したことを記念して,私たちの活動の原点である「地域でグリーフワーク」をコンセプトに企画を進めてまいりました。基調講演をいただきました川ア政宏様ならびにパネリストの方々,そして,本事業へのご後援をいただきました関係各位,広報へのご協力をいただきました関係各位に,心よりお礼を申し上げます。
人生のさまざまな局面における喪失体験について,参加された方々のフロアーからのご発言やアンケート結果から,それぞれの喪失への気づきがあり,向き合い方を再考するきっかけになったというご意見やご感想,そして発表者,パネリスト自身にとっても,意見交換の中で新たな気づきがあったという感想が寄せられました。ひとはすべて,変化を生き,喪失と向きあい,その人生を引き受けていく,そして一人ひとりのグリーフワークがあるということを,あらためて考える機会となりました。若い方のご参加も多く,グリーフワークについて地域に根ざしていくための裾野の拡がりも実感しております。
いくつかのキーワードがありました。繋がること,一人ひとりのちからを信じること,語り続けること。これからのグリーフワークかがわの事業展開にとっても指針となります。今後とも,当会へのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
2010年12月
グリーフワークかがわ理事長 杉山洋子

NPO法人グリーフワークかがわ設立記念シンポジウム終了報告
2010年12月5日(日)高松市生涯学習センターまなびCANにおいて,NPO法人グリーフワークかがわ設立記念シンポジウム「喪失と悲嘆を超えて−ライフイベントをめぐる心の危機を克服するための−」が開催された。当日,約100名の参加があった。
シンポジウムの開始にあたり,グリーフワークかがわ理事長杉山洋子から,2000年のグリーフワーク研究会発足以来の活動の経過と,2009年11月のNPO法人化にいたるまでの経緯について報告が行なわれた。
引き続いて,杉山理事長による基調講演「喪失と悲嘆−グリーフワークという心の過程−」が行われた。
喪失には,死別体験以外の様々なものがあり,そうした悲しみを癒すためには悲嘆の作業が大切であること,その作業を促すために耳を傾ける人が必要であること,そして,人それぞれのグリーフワークという心の過程をたどる中で新しい生き方や希望が芽生えて行くことなどについて述べた。
次に,NPO法人おかやま犯罪被害者支援サポートファミリーズ理事長の川ア政宏氏の基調講演「心の危機への支援と回復過程」が行われた。
川ア氏は,5年前に犯罪被害者遺族と交通遺児の自助グループと出会ったことが,グリーフワークを考えるきっかけになったと語り,遺族は社会の中で孤立しており,安全な場所で,繰り返し語れることが大切であり,そうした過程は一生続けられることもある。さらに,遺族の傍らにいる者は,支援者という立場ではない同じ水脈を感じ,生き,そして時間を共有していく存在であること,そして,自らも喪失体験を生きるものとして,遺族が語る「希望」に強く共感するところにいると述べられた。
次に,パネラーからの報告が行われた。
香川県臨床心理士会産業領域専門委員会委員の葛西真樹子さんは,職場社会と心の健康−職場環境と人間関係をめぐる変化への対応−」というテーマで,働く人の現場における臨床心理士の役割を紹介された後,働く人たちに起こりうる喪失体験の特徴について,具体的な事例を交えて説明された。
夕映えの会の代表の藤田浩子さんは,「悲嘆と健やかな老い−高齢者の心の危機を支えるために−」と題され話された。自身の認知症の母親を抱え,介護の大変さや孤立感を実感する中で,介護者が孤立した状態では,とても介護どころではないという思いから,介護者5人で,お互いに支え合うための場「山本さん家(ち)」を開設した。これは,やがて地域にも認知されるようになった。また,元気であった親を看取るなど,様々な喪失を体験する中で,その支えに仲間はかかせない存在だとも語られた。
香川大学医学部附属病院看護部長でグリーフワークかがわの会員でもある阪井眞理子さんは,「病む人を支える人を支える−医療者・患者家族としての体験から−」の中で,患者の死に関わる看護師に対する日常的な支援体制や患者家族のための院内患者会や患者専用図書館を紹介された。また,看護者が家族とともに行なう死後のケアであるエンゼルケアを紹介され,これが,家族と看護者のグリーワークの役割を果たしていると述べられた。
最後に,NPO法人マインドファースト副理事長の柾美幸さんは,「自殺遺族支援−孤立と喪失を克服するために−」と題して,親の死を経験したとき,家族の中でそのことを語れず孤独のなかにいる子どもたちとかかわることがあったと,小中学校のソーシャルワーカーとしての経験を語られた。また,NPO法人マインドファーストが行なう自殺遺族支援「サバイビング」を通して,遺族支援の困難は大きいが,語ることで人と人がつながるという人が持つ力を信じられるようになり,共にいることの必要性を学んだと締めくくられた。
その後のパネルディスカッションでは,参加者から,「この問題に関する若い人たちへの対応はどのようにされているか」の問いに対して,川アさんからは,遺族が学校に出向く語り部について,葛西さんからは,新入社員研修について,藤田さんからは,若年性の認知症の家族には若い人もいるが,それらの人へのケアが遅れていることについて,それぞれ解説があった。また,阪井さんからは,若いナースへの支援について,柾さんからは,スクールソーシャルワークとしての対応について紹介があった。
さらに,会場からは,支援する側,される側という立場を離れ,双方向で支え合うということがおきていることを実感した。死をめぐる喪失体験の支援では,支援者自身の死生観や哲学が問われる経験をしているといった感想が述べられた。
シンポジウム終了後,41件の参加者アンケートからは,貴重な感想と意見が多く寄せられた。
当日はマスコミの取材も3社あり,12月10日のTSCテレビせとうち報道番組「せとうちパレット−どう防ぐ自殺を」の中でシンポジウムの模様と理事長のインタビューが放映された。12月11日の毎日新聞では,「死別体験者の精神的ケアを」という見出しで,本シンポジウムが記事として大きくとり上げられた。
この記念事業は,ライフイベントに伴う喪失と心の危機への知識と理解を深めることにより,地域社会において一人ひとりが心の危機にさいして適切な対処を行ない精神的不健康の予防につとめるとともに,心の危機や不健康状態に陥った人たちに対する理解と支援活動の広がりを図るため,関係機関へ呼びかけて行なわれたものである。企画にあたっては,対象を市民一般とすること,特別講演は行わず,シンポジウム形式による実践報告と意見交換を大切にすること,講師やパネリストについては地元の団体,個人にお願いし,連携を拡げることを基本コンセプトとしてきた。
今回のシンポジウムは,様々な対人援助場面における喪失と悲嘆の重要性を再認識するとともに,パネリストと参加者との議論や意見交換をとおして,グリーフワークと当会の活動に対するさらなる理解が深まる実り多い機会となったと考える。(文責:三好千秋,花岡正憲)



Copyright(c) 2009 Griefwork Kagawa. All rights reserved.