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2006年グリーフワーク・シンポジウム終了あいさつ

グリーフワーク・シンポジウムを終了しました。
みなさまご協力ありがとうございました。

 「保健医療現場における喪失とグリーフカウンセリング」をテーマとして、過去約5年間,当会が行ってきたグループによるグリーフカウンセリングの報告と、保健医療現場関係者間の意見交換を行いました。参加者の方々からもご意見、ご質問などを積極的に発言いただくなかで、グリーフワークについて今後の支援の連携のあり方や、まだまだ残されている課題について、考える機会になりました。また、アンケートにも多くの方のご協力いただき、グリーフワークに対する関心の深さをあらためて感じた次第です。ありがとうございました。
 来年度企画しているグリーフカウンセラー養成講座基礎コースについては、今回のシンポジウムでの議論を踏まえてさらに内容を練り、またグリーフケアについては、今後とも、なにができるかということと、なにをすべきかということを考え、議論し実行していきたいという思いを新たにしています。

 今後とも当会の活動についてご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

グリーフワーク・かがわ代表 杉山洋子
 なお、シンポジウムの内容について、詳しくご覧になりたい方は、ここをクリックしてください。

 
2006年グリーフワーク・シンポジウム終了報告

 2006年12月3日(日),香川県社会福祉総合センターにおいて,「保健医療現場における喪失とグリーフカウンセリング」と題して,グリーフワーク・かがわ(以下「GWK」)主催のシンポジウムが開催された。本シンポジウムには,香川県,香川県臨床心理士会,香川いのちの電話協会からの後援があった。今回のシンポジウムは,過去約5年間,GWKが行ってきたグループによるグリーフカウンセリングという実践経験を踏まえ,保健医療現場における喪失と悲嘆への支援という視点から関係者間の意見交換を行うことにより,今後の連携のあり方を考えることを目的に企画されたものである。参加者は37名であった。
 開会の挨拶にあたり,当会代表の杉山洋子から,喪失と悲嘆の過程とその支援の意義,GWKのロゴマークに象徴されるGWKのミッション,そしてシンポジウムの趣旨について説明が行われた。
 引き続き,第1部「グループミーティングの現場から」では,GWKのグリーフカウンセラー古澤光子による活動報告が行われた。グループミーティング,啓発活動,出版活動,講師派遣等についての概説が行われた後,GWKの主要な事業となっているグループミーティングに関しては,実績報告に加えて,グループミーティングの周知と参加の方法,参加のルール,カウンセラーの役割,グループミーティングの進め方などについて,パワーポイントで編集したプレゼンテーションを用いて詳しい解説があった。最後に,保健医療現場における今後の展望と課題として,「健康の喪失」に伴う心理的ケア,闘病過程における患者ないし家族への支援,突然死等予期せぬ死別への対処法,医療スタッフに対する心理的ケアなどの必要性を強調して活動報告を締めくくった。
 第2部のシンポジウム「グリーフワークをどう支えるか」は,GWKの副代表池島邦夫がコーディネーター役を務め進められた。
 最初の発言者であるGWKの杉山代表は,GWKへの関わりのきっかけが,他でもない個人生活の中で起き続けている喪失であったと語り,自らが親友を癌で失ったときの反応を追体験的に紹介し,喪失と悲嘆という心の過程についての解説を行った。また,保健医療現場においてスタッフの喪失への反応として日常的に観察される無力感,燃え尽き,心身の虚脱感などについて触れ,こうしたさいは保健医療スタッフ自身が抱えている情緒的に未解決な部分が露呈しやすいため,スタッフ自身が受けとめられる場が保証されていないことは大きな問題だが,一人一人が普段から利用できるネットワークを持っていることも大切であると強調した。最後に,ボランティア活動としてのグリーフワークについては,自分自身の悲嘆の克服を経験した人こそ有効な援助ができるのではないかと付け加えた。
 2番目の発言者である香川県立中央病院の西山美穂子さんは看護師で,医師,看護師,薬剤師等の多職種で構成される緩和ケア推進室緩和ケアチームのスタッフでもある。西山さんは,癌告知を受けた患者は,その反応としての変化が心と身体に現れるだけでなく,自分にとって意味を持っていたものが失われるという感覚から,役割喪失と家族や周囲の人たちとの関係の変化が起きるため,自分らしさを取り戻すのは決して容易な過程ではない。したがって,とりわけ末期患者においては,その人らしくサポートする体制が重要であると語られた。また,一般病棟では,患者に対しても,また家族に対しても悲嘆のケアが充分でないため,まず,悲しみを語れる場をつくることが大切であるとも述べられた。さらに,生死を分ける医療場面である救急外来や蘇生現場においては,なによりも患者をケアすることが家族のサポートにもつながると,ご自分が経験された事例を踏まえ,遺族となった人たちとの印象深い出会いを紹介された。
 最後の発言者である香川がん患者の会「さぬきの絆」の岡田千都子さんは,「さぬきの絆」の事務局員で,ふだんは訪問看護師として勤務しておられる方である。2006年2月,「さぬきの絆」を発足するまでの経緯を紹介された後,当初約10名でスタートした「さぬきの絆」は,今日140名の会員を擁するにいたり,会員が会に求めるものは様々ではあるが,今のところ,「納得の行く治療を受けたい」,「病気についての知識が欲しい」,「行政への働きかけ」の3点に活動目標を置いているという。当面の課題としては,「さぬきの絆」が,当事者にとってかけがいのない人の集まりとなり,それぞれの会員の事情に添った支援組織として機能できるようになることであること。そのためには,今後は患者主体の会にして行きたいと語られた。一方,岡田さん自身,訪問看護師として,また一患者家族としての経験を通して,保健医療現場は患者へのケアが精一杯で,家族への支援が抜け落ちてしまうことを実感しており,特にGWKのミーティングのようなネットワークの存在は,死別ということを語り合える場を必要としている人たちにとって,大きな支えになるのではないかと述べられた。
 予定されたシンポジストの発言の後,質問と意見交換の時間が設けられた。西山さんは,「多忙な臨床現場で,死と喪失をめぐるスタッフの大変さをどのように支えて行くか」という他のシンポジストからの質問に対して,「チームの中でスタッフの声を押し殺さないことである」としながらも,「ふだんは家族のケアができないだけでなく,家族への声かけがかえって家族を傷つけていることもあるのではないかと危惧している」と述べられた。また,会場の看護師からも,現場のスタッフの燃え尽きを防ぐための具体的な方法についての質問があり,こうしたことから医療現場で働く人たちへのサポートが,かなり差し迫った課題になっているとの印象を受けた。
 在宅ケア場面では末期がんや転移がんの痛みのコントロールとなると,地域医療の限界から患者と家族が安心できる支援を得ることが難しいのが実状であると,ケアギバーとして苦悩する家族からの切実な声も上がった。別の発言者からは,こうした問題を解消するためには,患者や家族に対して,情緒面や心理面からのケアだけでなく,現状の保健医療サービスの中で具体的なオプションを探り,提供しようとする関係者の工夫や努力も必要ではないかとの提案も行われた。
 一般の医療現場や緩和ケア場面における心理面のケアという点で,心理専門職の役割を期待する意見もあった。一方,ある医療機関の緩和ケア病棟で働く職員からは,緩和ケアの推進は,緩和ケア病棟だけで成り立つものではなく,他の関係者の協力や地域の人々の理解があってこそ可能になるものであると,心と身体のケアの基本問題に関わる指摘があった。また,喪失と悲嘆のケアに従事する人たち自身の死生観が問われる質問が,各シンポジストに対して投げかけられる場面も見られた。
 今回のシンポジウムでは,保健医療現場における喪失と悲嘆に関わる支援のあり方を巡って,関係者の間で意見交換が行われる中で,現場における隘路や問題点も浮き彫りとなり,今後の連携のあり方だけでなく,GWKの活動を再考する上でも有意義なシンポジウムになったと言えよう。
(文責:花岡正憲)

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