2016(平成28)年4月グリーフワークかがわ
ニュースレター第144号(HTML版)
2016(平成28)年5月6日 グリーフワークかがわ広報部
◆認定カウンセラー研修をとおして◆
~立ちどまり,そして確認すること~
精神科医 下坂幸三氏(1929~2006)は,面接の基本技術として,患者と家族の語ることを「なぞるような気持ちで」聴くことだと述べている。なぞりきれないときには,待ったをかけて,徐々に説明してもらうと,どうにかまたなぞれるようになる。こうしたなぞりを怠っていると,何度会っても半解りのままで進むことになるという。
解ったつもりになることは対人関係のなかですれ違いを生む。日常生活においてしばしば経験することだ。下坂氏の言葉を引用すれば,対人援助活動を行おうとする者は,クライエントの「発言のひとつひとつに留滞して吟味していくことが,おりおりに必要である」と言う。
4月24日と28日,認定グリーフカウンセラーの新規登録者と現任実務者を対象に研修を行った。相談事業の実施要領と対応マニュアルの確認と質疑を終えて,あらためて下坂氏の論文を思い出した。私たちは,相談事業の立ち上げにさいしては,演習や意見交換を重ね,相談現場の現実を踏まえたルール作りをしている。しかし,規則やマニュアルは完成したと同時に古くなっていく。私たちの活動が,社会資源のひとつとして貢献し続けるために,折に触れて実務者によるふりかえりと意見交換を重ねていくことが欠かせない。視座を拡げ,変えてはならないことと変えていくことを見極めることも必要である。
下坂氏は,摂食障害の患者と家族の治療経験の中で,一人ひとりがそれぞれの文脈の中で言い分を持っていること,そしてそれを確認することこそが,クライエントがaccept(カウンセラーに理解)された感覚に繋がること,そしてそれを治療過程のなかで何度も繰り返すのだと語っている。クライエントがacceptされたと感じられるための「カウンセリングの技法」と,実施要領やマニュアルなどクライエントに対する「カウンセラーの作法」は,次元の異なるものではないと思う。
引用文献:下坂幸三 著 心理療法の常識 1998 金剛出版
2016年4月29日 グリーフワークかがわ理事長 杉山洋子
◆リビングwithグリーフ◆
失錯行為
花岡 正憲
3月11日午前の参院本会議で,安倍晋三首相は,待機児童の解消に関する答弁に際して,「子どもが生まれたのに,『保育所』に預けられない,仕事を続けられないお母さんたちの気持ちが伝わって参ります」とある答弁書の「保育所」と言うべきところを「保健所」と誤読した。野党席からブーイングが起きて気がつき,首相は「保育所」と言い直した。
フロイト,S.は,『精神分析入門』の中で,失錯行為について触れ,言い間違い,読み間違い,やり損ない,ど忘れなどは,一見根拠のない過ちのようではあるが,これらは必ずしも偶然ではなく,無意識の願望の表れであるとした。
フロイトは,議長が議会の開会を宣言すべきところ閉会を宣言してしまった失錯行為の例をあげている。開会に当たり,「議員諸氏のご出席を確認いたしましたので,ここに閉会を宣言します」と言ってしまったという。これに関してフロイトは,議長は議会の形勢が厳しいので,すぐに閉会してしまいたいという意図が漏れ出たのだという。
言い間違いやど忘れは,特にそのことに意味がないように思われる場合でも,「異なる二つの意図が衝突,干渉しあう」とも言われる。約束の時間を忘れるのは,相手に会いたくないと言う気持ちの現れのこともある。ボーイフレンドが,ガールフレンドの誕生日を忘れていたり,別の女性の名前で呼んだりして,不信感を与えてしまうのも,この類のものだ。
先の首相の言い間違いが,いわゆるケアレスミスでは済まされず,野党の反発を受けたのは,言葉の使い手の精神内界が垣間見えたからであろう。さらに,首相にとっての「保健所」や「保育所」さらに「子育て」とは何かを分析することが可能なら,その背後にどのような衝動や葛藤が潜んでいるかが明らかになり,深層心理が見えてくるかもしれない。
疲労,注意散漫,緊張感の低下などが失錯行為に関係することがあるが,これらは失錯行為の発生要因として本質的なものではなく,言い違いややり損ないの心理機制を誘発しやすくしているに過ぎない。
クライエントと向きあうカウンセラーも,プロとしての仕事の現場で無意識の欲求が現れ,クライエントを不快にさせることがある。時計を見る,一度聞いたことを何度も聞く,眠気を催す。いずれも,カウンセリングを早く終わらせたい,クライエントの話に関心がないという無意識が出ていることがある。
カウンセラーがクライエントに対して抱く否定的な感情は,普段は抑圧ないし否認されているが,失錯行為として漏れ出すことがあると言うことだ。こうしたことから,例えば,カウンセラー自身にクライエントと重なる喪失体験があって,それが未だ解決されていないとき,クライエントの悲嘆感情を支えることが難しくなる。
失錯行為は,決して偶発的なものではなく,その人固有の意味を持った心的行為であり,その意図を読みとれる場合が少なくない。ことに言葉に責任を持つ政治家やカウンセラーにとっては,その資質に関わることでもあり,日常的な失錯行為の中に自らのどのような衝動や願望が働いているか,内省的であることが欠かせない。
(グリーフカウンセラー 精神科医)
2016・4・22
報告
◆2016年4月10日 第93回 理事会開催◆
《審議事項》
第1号議案
2016年度事業計画に関する事項
議長から,認定カウンセラー拡大会議での議事の報告がされ、以下の審議があった。
①グループミーティングについて2016年11月以降の会場、開催日時、場所について審議され,3月27日のグループミーティング担当者会議の結果を元に会場確保に向けて会場候補を当たることとなった。
②モデル事業として第2グループの立ち上げに関して、調査研究費として予算をつけることで承認された。
③グリーフカウンセラー認定について、現任者現認者の認定更新制度についての細則をつくることで承認された。調査研究について、モデル事業として「喪失を経験した子供の親・保護者グループ」の立ち上げを行うことが承認された。
④寄付依頼について、具体的な方法を示して寄付依頼を行っていく必要がありホームページの寄付ページの作成について話し合いがされた。以上をもとに理事長が修正案を作成することとなった。
第2号議案
2015年度事業報告,収支決算に関する事項
事業報告と収支決算に関して事務局から報告があり、収支予算書を作成して次回の理事会で審議することとなった。
第3号議案
第11回総会に関する事項
第11回通常総会は5月29日(日)13時30分から高松市男女共同参画センターで開催されることで承認された。
第4号議案
香川県共同募金会平成29年度事業助成申請に関する事項
事務局案が提示され正式に申請を行うことで承認された。
第5号議案
平成28年度地域自殺対策強化事業費補助金申請に関する事項
平成27年度の申請と同様に見込み額のとおりに正式に申請を行うことで承認された。
第6号議案
認定カウンセラー研修に関する事項
2016年4月24日(日)15:00~17:00 、4月28日(木)18:30~20:30,グリーフワークかがわ相談室で講師担当は杉山洋子、村上美智子で研修を行うことで了承された。
第7号議案
香川県共同募金会平成28年度テーマ募金に関する事項
さらに詳しい情報を集めて次回の理事会で審議を行うこととなった。
◆2016年4月17日 第43回 認定カウンセラー会議◆
【審議事項】
グループミーティングについて、
現在は担当者が3人体制で入っているが2015年の現状をみると、2人体制で十分やっていけるのではないかとの意見が出された。今後は3人が担当に入る必要性がみられないのではないかと話し合いがされ、理事会で審議してもらうこととなった。
【勉強会】
・クライシス・カウンセリングハンドブック 第4章 身体的・性的虐待 担当者:瀬尾憲正
被害の相談を受けたときのカウンセラーとしての対応の仕方、男性加害者に共通する特徴・女性被害者に共通する特徴について学んだ。被害者になりやすい女性に対して、気づきを与えられる場所作りが必要と話し合った。