2016(平成28)年12月グリーフワークかがわ
ニュースレター第152号(HTML版)

2016(平成28)年12月26日 グリーフワークかがわ広報部

◆白山山荘講習会の報告◆


白山山荘では、「みとり」に対する職員の心構え研修を施設内で行っており、その研修の一環として当法人に講習の依頼がありました。2016年11月18日、グリーフワークかがわ副理事長の夛田敏恭が講師として出向き、「グリーフとは・・・」の演題で講習を行いました。

様々なグリーフの種類と特徴、グリーフ・カウンセリングの種類と特徴、葬儀から考えるグリーフ、高齢者のグリーフ、高齢者と家族とのかかわり方、会話の重要性、について講習が行われ、受講者からの感想として、直接的には「みとり」には関係ないかもしれないが、異なった見方もあることを知ったことや、入所者家族との関わり方を考え直すことも必要と思ったとの声がありました。


◆第26回グリーフワークかがわ公開セミナー報告◆


テーマ:苦しみ~舞台にみるハンセン病~

  • 第26回公開セミナー写真

講師は、地元の社会派劇団“マグダレーナ”の劇団員。ハンセン病にかかった本人とその家族の苦しみをテーマとしたかがわ演劇祭参加作品である「瀉血」syaketuにおいて、自らの希望で、ライ病(時代背景が敗戦の4年後)を発症した女性の役を演じたと言う。

ストーリーではその女性がライ病を発症したが故に、家族は人目を憚り、生きながらにして蔵に隠し葬り、周囲へは空襲で死んだと嘘の人生を語られているという設定。

70分の舞台のDVDを観たあと、制作側のインタビューを交え参加者からの感想を引き出したり意見交換をおこなったりした。今でこそなくなったが、その昔、ハンセン病に対する差別や偏見が根強い社会において、病気そのものの苦しみに加え人間としての尊厳の喪失という苦しみ、また、それは病気にかかった本人のみならず、家族それぞれの喪失と苦しみでもあったようだ。

DVDの内容は、大変衝撃的であり、演劇を通して考えさせられずにはいられなかった。

これまでとはひと味違った形式でのセミナーの試みだったが、運営側としても大いに手応えを感じました。

(記録:植田 夕香)


◆リビングwithグリーフ◆


死に至る病~ギャンブル依存症~

花岡 正憲


カジノ解禁を柱とするIR法(統合型リゾート推進法)は,7割近い世論の反対があるにもかかわらず,充分な審議もないままに12月15日未明衆院本会議で可決成立した。そもそもIR法は,観光振興や経済振興など成長や地方活性に役立つかどうか疑問が大きい。中でもギャンブル依存症対策については最重要課題とされながらも審議が尽くされていない。

日本では,競馬,競輪,競艇などの公営賭博やパチンコ,パチスロがあり,2013年の推計では,依存症者は既に536万人にのぼると言われる。ギャンブル依存症は, 国際疾病分類では,「病的賭博」と呼ばれ,「自分の仕事を危機に陥れ,多額の負債を負い,嘘をついたり法律を犯して金を得たり,あるいは負債の支払いを避けたりすることがある」と定義されている。

人の脳は,ストレスがかかると,自己処方(self-medication)としての嗜癖行動に走りがちである。買い物や食事で自分自身を慰めようとすることもあれば,ビデオゲームやセックスと言った方法を用いることもある。嗜癖は,極めて人間的現象であるが,こうした自己鎮静化戦略は増大して行き,通常の社会的レベルからの逸脱を招きやすい。大麻,覚醒剤,麻薬などは言うまでもなく,抗不安薬や抗うつ薬など,治療薬自体にも嗜癖性がある。

薬物やアルコールにおける物質嗜癖に対して,ギャンブルは過程嗜癖と呼ばれる。いずれも,パワー幻想や陶酔感に耽るための偏った嗜好である。ギャンブルは付加価値を生じず,何か新しい価値を生み出すことによる達成感や満足感は得られない。滅多にないジャックポット(大当たり)も,あったらあったで,更なるパワー幻想を求めてのめり込む。

パワー幻想は所詮幻想に過ぎない。パワー幻想が破綻することの不安と焦りから,次第に自暴自棄的に金をつぎ込むようになる。もはや以前のようなスリルや興奮は感じられない。それでも,強迫的にギャンブルを続けずにはいられなくなる。こうして嗜癖は悪循環に陥る。これは,パチンコ依存症の人がよく経験することである。

病的賭博は,アルコールや薬物と同様,耐性や離脱症状(やめたときの苛立ち,不安,気分の落込み)が見られる。経済的破綻,家族関係の崩壊,失職,健康問題,社会的信頼の失墜や違法行為など,こうしたマイナスの価値に抗えなくなる。ここに依存症が自己破壊的とされる所以がある。当人は,ギャンブルをコントロールしているのではなく,ギャンブルに支配されるようになる。

精神分析家カール・A・メニンジャーは,『おのれに背くもの』の中で,人間の精神生活における無意識的な自己破壊的・自己処罰的傾向(ジグムント・フロイト『快感原則の彼岸』)について触れ,突然で急激な自己破壊の自殺に対して,一寸刻みの自殺を「慢性自殺」または「慢性自己破壊」と呼んでいる。こうした部分的な自殺は「生ける死(living death)」であり,破壊的衝動はしばしば累進的であって,犠牲の支払い額が逐次増大して行く。そして,ついにその人は,いわば破産し,現実の死に降伏しなければならなくなると述べている。

IR法推進派は,カジノ部分の面積率は僅か3パーセントであると強調するが,僅かな面積部分で人心や命など大切なものが失われる。いわゆるカジノ法は,国民を見えざるスケープゴートとして,死に至る病に導く,国家による投機という特徴がある。

(グリーフカウンセラー 精神科医)
2016・12・22


◆2016年12月11日 第101回 理事会開催◆


《審議事項》


第1号議案

2017年度香川県自殺対策事業の実施予定に関する事項

第100回理事会からの継続審議事項として,実務者研修について会員の研修参加費と旅費が認められるか 香川県障害福祉課に確認した結果,香川県障害福祉課 今年度に限っての回答として,参加の研修会は専門性の高いものであると考えられることから,費用支出は可能であることが報告された。2017年度事業について,長期研修の場合や学会参加,シンポジウムやワークショップへの参加に関しても確認することとなり,次回の理事会でさらに審議していくことで了承された。会員の研修規定案を花岡理事が作成することとなった。

第2号議案

新規事業「グリーフワークデイ(仮称)」に関する事項

丸亀町ドームの仮予約については,3月11日は日赤が仮予約をしている可能性があり振興組合からの連絡 待ちであるが,日赤が災害救助というコンセプトを持ってイベントを行うのであれば,グリーフワークディ(仮称)のテーマは急性グリーフ反応に対する対応とし,日赤と連携していくのも良く,理事長が日赤の担当者と連絡を取ってみることとなった。PRカードを配布すること,アウェアネス・リボンを作り配布することが理事会の案として挙げられ,第51回認定カウンセラー会議で検討するとともに参加の呼びかけを行う。

第3号議案

ブロシュール増刷に関する事項

2016年度に増刷するブロシュールの修正案が示され,一部修正してAIYAシステムに発注することで了承された。2000部を印刷し,1000部は関係機関に配布,500部はセットしておき,残り500部は相談室に保管する。

第4号議案

2017年度相談事業コーディネーターに関する事項

現コーディネーターより年度末で退任希望が提出され,後任の人選について審議された。まず会員の中で後任候補を呼びかけることとし,直ちに確保が難しい場合は役割分担を調整しつつ現コーディネーターに退任時期を延長してもらえないかお願いすることとなった。

また今後の長期的な事務局の体制について,事務局作業と相談事業のコーディネーターの役割を担う常駐の事務局員を確保することが望ましく,常駐の事務局員を雇う場合の資金源について審議された。今後の求人についても検討していくこととなり,まず業務内容を整理していくことで了承された。


◆2016年12月18日 第51回 認定カウンセラー会議◆


【審議事項】

1.グリーフワークディについて

杉山理事長より、3月11日丸亀町ドームの会場について、日本赤十字社香川県支部に問合せたところ日本赤十字社は仮予約を解約しており、本年度はさぬきこどもの国でのイベント実施を予定していることが確認された。今後、グリーフワークかがわ事務局より、高松丸亀町商店街振興組合に改めて問合せを行い、会場を予約する。

【グリーフワークデイ実施の計画としては、12月理事会にて下記内容が検討されている】

  1. 「グリーフワークご存知ですか?」をテーマとする。
  2. ビニールに封入したブロシュールのセットを500部配布する。
  3. アウェアネスリボンを作成する。(ブルーを基調とする)
  4. 喪失を経験した子どもたちのケアについて啓発する。
  5. 啓発のためのパネル又はポスターを作成し掲示する。

・上記に加えて、当日配布予定のチラシを作成予定とし、次回1月認定カウンセラー会議までに花岡理事が案を準備する。


2.カウンセリング現場での状況報告と課題について

・グループミーティング担当者より、12月のグループミーティング参加者が1名と少数であったため、会場の変更の周知について検討してはどうか、提案があった。

3.コーディネーター募集について

・古澤コーディネーターより今年度末での退任希望が提出された件について、次年度のコーディネーターの人選について12月の理事会で審議された結果、まずは会員の中で後任募集を行うこと、コーディネーター業務だけでなく事務作業を業務とする常駐の事務員の配置についても検討していくこととなった。


【勉強会】


子どもの喪失と悲しみを癒すガイド 第3回

第1章「子どもたちの喪失と悲しみ」 担当者:杉山洋子 ・第1章21~27ページ

第1章の第2回目に引き続き子どもの時代に起こりうる喪失について、「自己の喪失」、「スキルや能力にかかわる喪失」「習慣にしていた何かを失うこと」「大人の世界による保護の喪失―未来の喪失」に関連し、『子どものために何ができるか?』についてテキストを読み進めた。特に虐待については、虐待する大人への支援として行政介入のほか臨床場面および地域ではどのような支援が考えられるか、暴力への依存という捉え方からのアプローチも考えられるのではないか、という意見もあった。

・今回の勉強会を持って第1章が終了したため、次回第2章の担当者は上野となった。


  • 編集後記:
  • 今年も1年間ニュースレターのご愛読と、沢山のご寄稿ありがとうございました。
  • 皆様のご支援に心から感謝申し上げます。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

  • とある講義でこんな素敵な言葉を知りました。老師の言葉です。
    • もし、あなたが落ち込んでいるなら、あなたは過去に生きているのです。
    • もし、あなたが不安を感じているのなら、あなたは未来に生きているのです。
    • もし、あなたが平和を感じているなら、あなたは今、ここ、に生きているのです。
  • どうぞ良いお年をお迎えください。
  • (村上 典子)