2017(平成29)年8月グリーフワークかがわ
ニュースレター第160号(HTML版)

2017(平成29)年9月2日 グリーフワークかがわ広報部

◆グリーフとの出会い◆


准看護師として初めて患者様の看取りを経験させていただいた私は、まだ二十歳にも満たない年齢で、患者様へのケアはもちろん、ご家族への寄り添いもできず、初めての夜勤で亡くなった患者様を前に、師長に指導を受けながら、ご家族と一緒に涙を流す事しかできませんでした。

「陽子ちゃん、初めての夜勤でごめんな。立派な看護婦さんになってな。」

あの日、息子さんに掛けられた言葉を、忘れた事はありません。このままこの仕事を続けていくには、知識も経験もなさすぎる。進学を決めたのは、グリーフへのケアの意味を考えた時でした。

その後、様々な経験をしながら、たくさんの患者様・ご家族の皆様からの学びをいただき、看護師としての経験を積み重ねてきました。

そんな私が、初めて妊娠し母親となったのは31歳。お腹の胎児には「十二指腸閉塞」という疾患はあったものの、生後72時間以内に外科的手術をすれば良い、特に難しい手術でもないと、新生児外科の先生から説明を受けた夜。34週3日で、息子は私のお腹の中で心拍を止め、寿命を全うしました。

「子宮内胎児死亡」看護師として机上で学んできてはいても、自分に降りかかった現実は、私にとって、また夫婦にとっての危機的状況でした。「産科はおめでとう!ばかりではありません」そう学生の頃、実習で指導者さんから言われた言葉の重みを。自分自身の経験で、改めて思い知りました。何より『わが子を守れなかった事』は、初めて看護師を辞めたいと思った出来事でした。

死産経験後、息子からのメッセージを受け取れるように。様々なご縁をいただきながら、産科勤務を11年間続けてきました。「小さな命を亡くした方に寄り添えるように」その寄り添いは、自己のグリーフワークにも繋がってきたものと思います。

決して医学が進歩しても決してなくなる事のない「流産・死産・新生児死亡」などの小さな命を亡くす事。現場で学んできた事を、これからも、ピアとしてのサポートはもちろん、専門職として伝える事、そして、様々な喪失経験をした方の支えになる事ができたらと思います。


またこの度、グリーフかがわの皆さまとのご縁をいただけた事に感謝するとともに、自分自身も学びを深めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

グリーフカウンセラー 中里 陽子


◆リビングwithグリーフ◆


働き方改革~「一病息災」のすすめ~

花岡 正憲


2013年,会員27万の米国イラク・アフガニスタン退役軍人会(IAVA)が,会員を対象として行った調査では,回答者のうち,30%が自殺を考えたことがあることが明らかになっている。

イラク戦争・アフガニスタン紛争では,テロリストが潜んでいるという事前情報で,民家にロケット弾を打ち込み踏み込むと,子供の靴やオモチャが散らばっている。こうした場面にたびたび遭遇する米兵の間で軍務に支障をきたす者が増えた。カウンセラーのもとを訪れると,「うつ病」とか「PTSD」と言われ,抗うつ薬の服用をすすめられる。米政府も,兵士が抗うつ薬を服用して軍務につくことを黙認してきた。(「米軍の秘密兵器-薬物武装した兵士」 2008年6月16日号Time紙から)

仕事に支障が出るようになり受診すると,抗うつ薬が処方される。症状に改善が見られないと,薬を増やしながら仕事を続ける。こうしたことは一般社会でも起きている。

勤労には,権利と義務が複雑に絡むため,被雇用者は,与えられた勤労の機会に応えようとして,無理をしてしまう。医療関係者も,必要な休養を取らせるよりも,服薬を続けながら頑張らせてしまいがちだ。そのため,燃え尽きたり,自殺を考えるようになったり,PTSDを発生させたりすることが少なくない。

働く人を薬物で武装させ,職場を戦場にしてしまうようなことがあってはいけない。憲法27条は,勤労の権利と義務にあわせて,弱者の立場の労働者を保護するための勤労条件の法定を国に命じている。労働基準法や労働安全衛生法なども,こうしたことが根拠になっている。

しかし,法律だけで心の病を防ぐことが難しいことも事実である。心の健康は,知らず知らずに損なわれていくことが多く,「無病息災」とはなかなか行かない。ちょっとした病のある人の方が,健康に注意するので,かえって大病を患うこと少なくなる。「一病息災」が肝心だ。そのためには,一度健康を損なったら,その経験を再発予防に生かすことが大切である。再発を病気本来の特性と決めてかからず,自分が調子を崩すきっかけを知っておくことが役に立つ。

健康の回復過程は,多かれ少なかれ似ているが,心の健康を損なう理由は人それぞれである。病気から回復しても,何がきっかけだったのか曖昧なままになっていることが多い。人によっては,何度か同じ失敗を繰り返しながら,調子を崩すきっかけに気づくこともある。こうしたことから,相談相手を持つことやセルフモニターが有効な場合もある。

例えば,人によっては,今でなくてもよいことやってしまう,自分でなくてもよいことを引き受ける,完璧をめざす,人の評価に過敏になる,運動や趣味を中断して仕事を優先するようになる,と言ったことが見えてくることがある。

国は,「働き方法案」として7つの法案を一括法案として秋の臨時国会に提出しようとしている。「残業代ゼロ法案」,「残業上限規制法案」など,中には過労死を招く危険性があるものもある。

国から働き方改革を言われる前に,一人ひとりの働き方改革が問われる時代であろう。心の調子を崩すきっかけとなる人間関係や自分の癖に気づき,セルフケアに生かす。自分だけの「一病息災」。これは大切な自主防災サバイバルキットでもある。

(グリーフカウンセラー 精神科医)
2017・8・28



◆2017年8月13日 第110回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2017年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースに関する事項

8月10日の第2回講師会の報告と事業説明会の準備に関する審議が行われ,役割,今後の進め方について了承された。

第2号議案

高松市男女共同参画センター登録団体の継続に関する事項

高松市男女共同参画センター会議室利用に関する規程と登録団体の要件について理事長と村上美智子理事が確認し,次回理事会で報告することで了承された。市民フェスティバル実行員会について第2回はローマ理事の出席で申し込むことで了承された。

第3号議案

公開セミナーに関する事項

今月中に講師を決め,日程,会場案を作成したものを次回の理事会に提出することと,チラシ作成については童銅会員に依頼すること,チラシ発送先は次回理事会で審議することで了承された。

第4号議案

モデル事業『喪失を経験した子どもの親・保護者グループ』に関する事項

7月27日に行われた第6回ワーキンググループの議事録を確認し,チラシ発送先についてはグループの目的と予算とを確認し再検討を行い,「子どもたちが近くにいること」を条件として優先して絞り込みを行った。チラシ印刷発注を行い,発送する。

第5号議案

事業報告,活動計算書,貸借対照表等のHP掲載に関する事項

定款変更に従い,HP掲載の環境を整えることで了承された。



◆2017年8月20日 第59回 認定カウンセラー会議◆


【議題】

  1. モデル事業 喪失を経験した子供の親・保護者のためのグループミーティングの教材・資料について
     絵本『さくとさようなら』が候補となった経緯がローマ氏より説明され、使用方法、購入方法などが話し合われた。

  2. カウンセリングの現場での状況報告と課題について
     改めてヘルプラインとホットラインの違いについて理事長より説明があった。

  3. その他
    【理事会からの報告】
    ①グリーフカウンセラー養成講座の受付けの締め切りが9月4日まで延長となった。
    ②高松市男女共同参画センターの登録団体となる要件について、理事長があらためて確認を行ってくるとの説明があった。今年度市民フェスティバルへの実行委員としての参加が予定されるとの報告があった。
    ③公開セミナー開催予定で、理事会での協議後開催日については決定される。
    ④香川県自殺対策連絡協議会への参加について(副理事長参加予定)
    ⑤共同募金会への協力(街頭募金運動参加)について(メールで参加を募る予定)


【勉強会】


子どもの喪失と悲しみを癒すガイド

第5章「さよならを言うための準備」 担当:神高由美子


[要 約]

子供は大人が思っている以上に状況を敏感に感じ取り、それなりの方法で自己表現も出来るということを大人が理解しておく。心の準備の有無は悲しみの度合いにも通じることもあり、子供にわかる言葉で事実を正直に伝えることは大切である。後に思い出と出来るように、手紙を書く、絵を描く、品物を渡すなどの行為も時に有効となる。子供の質問にも耳を傾け、時間をかけて向き合うべきである。子供の発達段階に応じた対応も必要である。