2017(平成29)年10月グリーフワークかがわ
ニュースレター第162号(HTML版)

2017(平成29)年11月19日 グリーフワークかがわ広報部

◆ゲートキーパー啓発事業のご報告◆


こんにちは。グリーフワークかがわ認定、グリーフカウンセラーの西山忠明です。

去る2017年10月5日(木)14:00~16:00善通寺市役所大会議室にてゲートキーパー啓発事業「自殺予防の基礎を学ぶ」~自殺予防のために私たちができること~をテーマに、グリーフワークかがわの技術援助として杉山理事長が講演を行い、私はアシスタントとして参加しました。

今日はその時の様子をお伝えしたいと思います。

プログラムは前半後半の2部構成で、前半は香川県精神保健福祉センターの森さんより「1.香川県精神保健福祉センターについて、2.自殺の現状について、3.自殺対策~ゲートキーパーについて~」という内容で、スライドを使いた丁寧で分かり易いお話がありました。特に香川県と善通寺市の自殺の現状には、市職員の方々も驚きを持って聞いていました。

そして後半はグリーフワークかがわの杉山理事長が「自殺予防の基礎を学ぶ」-自殺予防のために私たちができること-を講演しました。

冒頭、理事長の「皆さんは自殺についてどの様なイメージを持っていますか?」という問いかけに、それぞれのイメージをシェアするため、6名のグループに分かれ話し合いました。私もファシリテーターとしてあるグループに参加しましたが、それぞれのイメージを活発に発言してくれました。

次に「身近な人が自殺をほのめかした時に、あなたはどの様な対応をしますか?」との問いかけには、職員の方々も戸惑ってるように見えました。私は議論が活発でないグループをサポートするため各グループを回りましたが、どのグループの議論も活発で、善通寺市の職員の方々の意識の高さを感じました。

その後、メンタルヘルスケアの活動をしている認定NPO法人マインドファースト発行のファクトシートを配布し、杉山理事長が講義しました。特に「自殺に関する神話 10の間違い」では、それぞれが思い込んでいた間違いに対する気づきがあったと思います。

最後に杉山理事長が「今日の講演を体験して何か気付きはありましたか?」と問いかけに、職員代表の方が自殺のイメージを皆で共有できた事、誤った知識を持っていた事など有意義だったと語って下さりました。

今回の講演が成功に終わったのは、香川県精神保健福祉センター森さんの尽力をはじめ、認定NPO法人マインドファーストの確かなファクトシート、善通寺市職員の方たちの意識の高さ、そして杉山理事長の柔らかく包み込むような語り口などが相まっての事だと実感しました。

最後に内閣府の自殺対策プロジェクトのキャンペーンソング「あかり」ワカバを紹介します。

とにかくいい歌で泣けます。この歳になって歌を聞いて号泣したのは初めてでした。

今後も私たちグリーフワークかがわは「自殺予防ホットラインかがわ」を通じて自殺予防に貢献していきたいと思います。

電話:087-813-1247  受付:毎週土曜日 15:00~18:00

グリーフカウンセラー 西山 忠明



◆リビングwithグリーフ◆


私たちの社会の難点~空気を読ませる空気感~

花岡 正憲


発達障害には,「自分の話ばかりで,相手の話を聞かない」と言ったコミュニケーション障害がある。そのため,発達障害は「空気が読めない」人のことだと誤解されることがある。

一部の発達障害の人の話は,論理の運びが緻密過ぎたり,超論理的であったりするため,コミュニケーションに齟齬が起こりやすい。しかし,よく聞けば,なるほどと思えることが少なくない。アスペルガー症候群と言われた人に見られる優れた技能や天才的発想は,おそらくそうした特徴と関連があるのだろう。

「空気が読めない(KY)」と言う表現は,約10年前から,女子高校生の間で使われるようになったと聞く。仲間内でコミュニケーションが取りにくい人物を標識化(ラベリング)するために作られた若者造語のようだ。「空気を読む」の英語は,“read between the lines”だが,これは行間を読むとか,発言の真意を理解するという意味で,日本語の「空気が読めない」に相当する英語は見当たらない。

若者文化には,社会の持つ陰の部分が映し出されやすい。「空気が読めない」とは異質なものを排除しようとする社会の不寛容に他ならない。こうしたスティグマが発生する背景は何なのか。

日本語は,コンテクスト,すなわちコミュニケーションの基盤となる言語,知識,体験,価値観,嗜好性などの共有性が高いのが特徴である。話し手の側に伝える努力やスキルがなくても,なんとなく通じることを期待してしまう。語り手が聞き手に依存する傾向が強い。明示的で直接的な表現より曖昧な表現が好まれ,論理的飛躍が許される。Yesは,YesのこともあればNoのこともある。これをハイコンテクスト・コミュニケーション文化と呼ぶ。一方,西欧化したコミュニティは,ローコンテクスト・コミュニケーション文化で,言語が持つ力に高い価値を置き,語り手の能力が問われ,直接的で解りやすい表現が好まれる。

平穏な日々の生活では,ハイコンテクスト・コミュニケーションが便利なことがあるが,人間関係のトラブルや危機的な状況下で,ハイコンテクスト・コミュニケーションでは行き詰まってしまう。例えば,日常的に使われる「頑張ってね」と言う曖昧な表現も,逆境下にある人や被災者となると,これ以上何をどう頑張れと言うのかと反発が起きる。禁句にさえなる。

集団同調指向が優位であった時代はともかく,多様な生き方や個人的特性を認めずには成り立たない社会である。真剣な話し合いや明確な意思表示を妨げる文化は閉塞感をもたらす。

会議の席で「ご異議ありませんか」と言われ,質問などをすると議長団を困惑させてしまうことがある。退社時刻になって,「お先に失礼します」と言って退社すると,あの人は天然だと言われかねない。今日社会問題になっている過労死や過労自殺の背景に,日本特有のコミュニケーション文化があることは否定できない。

マスメディアの劣化が言われて久しい。日本の報道の自由度ランキングは,2016年世界で72位と,毎年下がり続けている。官邸記者クラブで一人鋭い質問をする女性記者が浮いてしまう。集団同調圧力の中で,コミュニケーションの進化に消極的になっているジャーナリストの問題は深刻である。

問われるべきは,「空気が読めない人」ではなく,私たちを取り巻く「空気を読ませようとする空気感」であろう。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2017・11・3


◆2017年度公開セミナーのご案内◆


回数 開催日 講師 テーマ
第29回 2017年
11月19日(日)
瀬尾 憲正
(グリーフワークかがわ理事・ グリーフカウンセラー)
「生き方が逝き方」
上手に生き、上手に逝く:スマートエイジングの勧め
第30回 2017年
12月10日(日)
西山 忠明
(グリーフワークかがわ理事・ グリーフカウンセラー)
それぞれのグリーフワーク
第31回 2018年
1月14日(日)
中里 陽子
(グリーフカウンセラー)
ローマ 真由子
(グリーフワークかがわ理事・グリーフカウンセラー)
『小さな命を想うとき』
~ペリネイタルロスのグリーフを通して~
第32回 2018年
2月18日(日)
上野 美幸
(グリーフワークかがわ理事・グリーフカウンセラー)
大切なものを失った子どものこころ
第33回 2018年
3月18日(日)
夛田 敏恭
(グリーフワークかがわ副理事長・グリーフカウンセラー)
葬儀からみるグリーフ
  • 会場:丸亀町商店街カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 壱番街東館4階)
  • 参加費:500円(当日会場でお支払い下さい)
  • 企画運営:認定NPO法人 グリーフワークかがわ
    電話090-6288-1011
  • どなたでも参加できます。事前予約不要


◆2017年10月8日 第112回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

認定カウンセラー資格継続に関する事項

次回の理事会で細則案を提示し審議を行うこととなった。

第2号議案

平成29年度共同募金(平成30年度助成金)テーマ募金に関する事項

夛田副理事長より助成事業「大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト」について経過説明があった。事業内容を見直す必要があること,共同募金会での確認,寄付依頼リスト作成を次回の理事会までに行うことで了承された。

第3号議案

2017年度事業上半期の実施に関する事項

各担当理事から事業執行状況説明を行い、村上美智子理事より、資料(活動計画書、貸借対照表、事業費の内訳)を用いて2017年度事業上半期の実施内容の報告があった。認定カウンセラー会議でも上半期の執行状況を説明し下半期の活動の推進を図ることで了承された。

第4号議案

会費未納者への対応に関する事項

会費未納者への対応について審議の結果、理事長が会費未納者への退会確認を含む納入依頼書の原案を次回理事会までに作成して頂くこととした。



◆2017年10月15日 第60回 認定カウンセラー会議◆


【議題】

  1. モデル事業「喪失を経験した子どもの親・保護者グループミーティング」について
    ・第1回11月5日(日)予定:サポートメンバーが少ない。受付で少なくともあと4名は必要なので、認定カウンセラーを含めて更にメール等で呼びかける予定である。
  2. 2017年度事業 上半期の実施状況について
    ・相談事業の件数が、ホットラインかがわを除いて少ない。広報等の見直しが必要である。
    ・実務者研修としてスーパービジョンが未実施であること,電話相談、グループミーティング(現在実施中の「身近な人をなくした方のグループミーティング」、11月から実施の「ひまわりミーティング」)の担当者は積極的にスーパービジョンを受けるように理事長より念押しがあった。
  3. 共同募金テーマ募金について
    ・「大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト」(内容の中心事業として「喪失を経験した子どもの親・保護者グループミーティング」を行う)が平成29年度共同募金(平成30年度助成事業)としてテーマ募金の対象として決定されている。
  4. 次年度自殺予防週間の活動について
    ・西山さんから、自殺予防ホットラインかがわの活動を紹介してはどうかとの提案があった。
    ・来年度の事業計画を含めて、認定カウンセラー会議で自殺予防週間での具体案を提案することとなった。
  5. カウンセリングの現場での状況報告と課題について
    ・活動報告にみられるように、相談件数が少ないことに関して、討議した。
    ・相談事業を中心とした事業案内へ簡単にアクセスできるように、広報部と協力して、HPを含む広報の見直しを理事会へ提案することで一致した。
  6. 勉強会の新しい教材の注文方法について
    ・新しい教材は「喪失を経験した子どもの親・保護者グループミーティング」のテキストとすることが報告された。認定カウンセラーには、テキストは貸し出しする。


【勉強会】


子どもの喪失と悲しみを癒すガイド

第6章「教育者のために」 担当者 瀬尾憲正


◇教育者へ:できることのまとめ

  1. 喪失に対処しているこどもを見極める
  2. 悲しみと喪失の問題が何であるかに気づく
  3. こどもの行動の中で助けを求める(アクティングアウト)叫びに気づく
  4. 援助を求めるようにうながす
  5. 支援が得られる場所を見つける
  6. 知的および感情面での援助を求める権利を確立してあげる
  7. 学校内や学校間で仲間集団(ピアグループ)で結びつけられるようにする
  8. 教師を教える者は、教師にこどもの力になれることを納得させる
  9. 時間をかけて、さまざまな視点で眺め、子どもを信じて、一緒に過ごして、子どもを信じて、自由に探索させ、自由に表現させること