2017(平成29)年12月グリーフワークかがわ
ニュースレター第164号(HTML版)
2018(平成30)年1月9日 グリーフワークかがわ広報部
◆第30回グリーフワークかがわ公開セミナーご報告◆
テーマ「それぞれのグリーフワーク 私たちにできること」
今回の公開セミナーは講師の西山忠明氏の自己紹介から始まりました。
グリーフワークかがわの認定グリーフカウンセラーであり、産業カウンセラーでもある西山氏のご両親を亡くされた体験やご自身やご家族の病気など様々な喪失体験について話して下さいました。
そしてグリーフとは何か、グリーフワークとは何かについて時々参加者に質問をされながら分かりやすい説明がありました。
「周りに喪失体験をされた方がいた時は、励ますのではなく、そっと寄り添い、悲しい気持ちを聞いて受け止めて差し上げる。本人は語ることで気持ちが整理され落ち着いていく」ことを確認することが出来ました。
次に上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン氏の「悲嘆のプロセス12段階」の紹介がありました。
- 精神的打撃と麻痺状態
- 否認
- パニック
- 怒りと不当感
- 敵意と恨み
- 罪意識
- 空想形成、幻想
- 孤独感と抑うつ
- 精神的混乱とアパシー(無関心)
- あきらめ、受容
- 新しい希望、ユーモアと笑いの再発見
- 立ち直りの段階
そして、「それぞれのグリーフ」という事で、小学生の女の子、30代の女性、40代の男性、そして10代の男性の様々な形の4つの事例があげられました。そして、子供時代の喪失体験が後の人格形成に影響を与える事、また、核家族化が進み、病院で亡くなる方が多くなったことにより死が身近でなくなり、死に対して向き合うことが出来なくなったことから最近グリーフワークが注目されてきたことについてのお話がありました。
最後にグリーフワークかがわの理事であり精神科医の花岡正憲氏がグリーフカウンセラー養成講座の講師紹介で語られた言葉の紹介でセミナー前半の部が締めくくられました。
「喪失と悲嘆は人生の一部です。悲嘆とは愛を失うことではなく、失われたものを愛していたという感情です。喪失を経験した後の人生に意義を見出すために、この事実とどのように向きあえばよいか、具体的に学びたいと思います」
セミナー後半はグループワークを行いました。テーマは「グリーフワークについてイベントを考えましょう」でした。3つのグループに分かれてそれぞれ1月~4月、5月~8月、9月~12月の季節に合わせたグリーフワークのイベントについて15分間ファシリテーターと一緒に話し合い発表しました。
発表されたイベントは、
- 2月:亡くなった父親や兄弟、夫、友人にバレンタインデーのチョコレートを手作りしてお供えする。
- 3月:お彼岸に仏画に塗り絵をする。にぎやかなイベントが辛い時、一人一人静かにすることが出来る。 故人を思い出すだけでなく、冥福を仏様にお願いする気持ちで仏画と向き合うことが出来る。
- 5月:母の日にお花アレンジメント、ハーバリウム(お花をオイル漬けにしたもので1年持つ)を作る。
- 6月:水無月(6月30日の夏越祓に暑気払いや厄除けのために主に京都で食べられる和菓子)を作る。
- 7月:花火を見る会。花火をする会。
- 8月:お盆に灯篭を作る。おだんごを作る。
- 9月~12月の秋から年末にかけて、ルミナリエやろうそくなどの光を見ることで故人を偲ぶ。お月見をしながら故人を偲ぶ。お彼岸だけでなく年末にもお世話になった方にご挨拶するためにお参りに行く。
西山氏から、悲しくても年末の忙しさの中に身を置くことで悲しさを紛らわすことが出来たり、法事にみんなで集まることで孤独感が減ることがあることについて話がありました。
また、月命日にきれいなお花を供えたり、見に行ったりすること、仏像を彫ること、8月の夏休みに親を亡くした子供たちでキャンプに行くこと(様々な年齢の子供たちが出会い「親を亡くしたのは自分だけではない」ことを知ることが出来る)などのイベントの提案がありました。
大切な人を亡くしたことで将来出来なかったことをしてみる、また、同じ喪失体験をした人たちが集まり一緒に何かを作ったり話したりすることがグリーフケアになるということが分かりました。
参加者の中には「まだイベントを考えたりしたりする気になれない」という意見もありました。
最後に質疑応答の時間がありました。お二人の参加者から質問がありました。
- 質問1:色々なアイディアが出ましたが、それらを実際に進めて行くことが大切だと思いました。このようなグリーフワーのイベントを行うにあたって何に気をつけていますか?
- 答え1:グリーフカウンセラーがついてサポートすることが必要です。また、先生とアシスタントの存在も必要となります。
すると質問者から情報の提供がありました。
このようなイベントは京都大学「心の未来研究センター」での取り組みと似ています。
イベントの意義は・亡くなった人との関係を再構築する。・自分との関係を結びなおす。とされています。
- 質問2:西山さんは波乱万丈の人生を送られていますが、「これがあったから乗り越えられた」という出来事、存在がありましたか?
- 答え2:母が病気で入院してから亡くなるまでの一年間、父は毎日欠かさずに仕事後に病院に行って泊まっていました。小学生の私は寂しかったのですが、父が母に対して持った愛情を知って「人間とはこういうものだ」と知ることができました。父が亡くなった時は「いい人ほど早く亡くなるんだな。父は大好きな母のところに行ったんだな」と納得することが出来ました。
いつか自分が亡くなって両親に会ったときに褒められるように生きて行きたい。「ようやったな」と母に頭を撫でて抱きしめてほしい。その想いとやはり奥さんのサポートが大きいです。
質疑応答の後、1月14日に開催される次回の公開セミナーと毎月第一日曜日に開催されるひまわりミーティングのご案内があり、セミナーは終了しました。
記録者 戸部 幸与
◆リビングwithグリーフ◆
「#MeToo」が問いかけるもの
花岡 正憲
「#MeToo」を合言葉にしたセクハラの告発が世界に拡大している。米国の女優アリッサ・ミラノが,セクハラや性暴力を受けた女性が「Me too(私も)」と書けば問題の重大さを多くの人に分かってもらえると呼びかけたことが始まりと言われる。ジャーナリスト伊藤詩織さんの存在も大きい。伊藤さんは,2015年,元TBS記者に性的暴行を受けたと告発するも,逮捕直前に警察幹部からの指示で執行が取りやめになった。10月18日,捜査や司法のあり方を問いかけた著書『Black Box』を出版し,外国特派員協会で記者会見を開いた。
「二人きりで飲酒したのだから同意があったと思われても仕方がない」「逃げ出さなかったのが悪い」など,ネット上ではセクハラや性暴力を受けた人に対する女性からのバッシングも少なくない。セクハラや性暴力は,人としての尊厳が大きく傷つけられる「女性差別」だという認識が,同じ女性として希薄なのだろう。
#MeTooをセクハラや性暴力を受けた人たちのカミングアウトだけに終わらせず,国家的イニシアティブ(問題解決に向けた新たな具体的取り組み)につなげて行けるかどうかが課題だ。
例えば,映画やテレビでの強姦場面は作らないというルールもその一つだろう。女性はセックスを拒んでいるのに,男性に暴力的に迫られ,次第に抵抗できなくなっていくシーンも問題がある。女性は口では拒んでいるが,結局同意したかのような誤解を与えるからだ。
私たちの社会は,健康とお金がある日本人成年男性だけで成り立っているわけではない。外国人,子ども,若者,高齢者,障害のある人,LGBT,収入がない人,妊婦,赤ん坊を抱えた人,そして人口の大半を占める女性など,それぞれの事情を抱えた人々の生活の営みがある。
セクハラと性暴力の防止には,男女差別の根源に迫る取り組みが求められる。「15から50歳の女性の数は決まっている。産む機械,装置の数は決まっているから,あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と語った政治家の「女性は産む機械」発言は記憶に新しい。
明らかに女性の人格や意思決定を軽んじるような発言もあるが,通常の社会生活の中で,男性の優位性,女性の従属性が,知らず知らずに意識に刷り込まれて行くことの方が問題であろう。
例えば,テレビのニュース番組で,複雑な政治経済課題となると,女性キャスターが男性キャスターにコメントを求めるというステレオタイプな演出も気になる。女性は,男性よりも知的に劣位に置かれているという印象を与えてしまわないか。イベントやコンサート会場など込みあった場所では,女性トイレの長い行列は,見慣れた光景になってしまっている。
明らかに性差別だと思われることも,男性の側からの問題提起では,「あなたはフェミニスト(女に甘い男)なのか」と軽くいなされがちだ。
2016年4月に施行された「障害者差別解消法」の制定過程は,障害者とその家族の長年にわたる働きかけが大きかった。多くの「差別」は,当事者が差別に気づき「これは差別だ」と声を上げ,そこに支援者が関わって行くことで,解消に向けて動きが具体化するということも事実であろう。
(グリーフカウンセラー 精神科医)
2017・12・24
◆第31回グリーフワークかがわ公開セミナーのご案内◆
日時:平成30年1月14日(日)13時00分~14時30分
■テーマ:「小さな命を想うとき ~ペリネイタルロスのグリーフを通して~」
様々な事例を紹介しつつ、グリーフワークの大切さを学び、死別の哀しみに寄り添えるよう、私たちにできることを皆で考えましょう
■講師:中里 陽子 ローマ真由子
2017年度セミナーの今後の開催予定は、下表のとおりです。
回数 | 開催日 | 講師 | テーマ |
第29回 | 2017年 11月19日(日) |
瀬尾 憲正 (グリーフワークかがわ理事・ グリーフカウンセラー) |
「生き方が逝き方」 上手に生き、上手に逝く:スマートエイジングの勧め |
第30回 | 2017年 12月10日(日) |
西山 忠明 (グリーフワークかがわ理事・ グリーフカウンセラー) |
それぞれのグリーフワーク |
第31回 | 2018年 1月14日(日) |
中里 陽子 (グリーフカウンセラー) ローマ 真由子 (グリーフワークかがわ理事・グリーフカウンセラー) |
『小さな命を想うとき』 ~ペリネイタルロスのグリーフを通して~ |
第32回 | 2018年 2月18日(日) |
上野 美幸 (グリーフワークかがわ理事・グリーフカウンセラー) |
大切なものを失った子どものこころ |
第33回 | 2018年 3月18日(日) |
夛田 敏恭 (グリーフワークかがわ副理事長・グリーフカウンセラー) |
葬儀からみるグリーフ |
- 会場:丸亀町商店街カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 壱番街東館4階)
- 参加費:500円(当日会場でお支払い下さい)
- 企画運営:認定NPO法人 グリーフワークかがわ
電話090-6288-1011 - ※どなたでも参加できます。事前予約不要
~この事業は2017年度赤い羽根共同募金の助成金を受けています~
報告
◆2017年12月10日 第114回理事会◆
《審議事項》
第1号議案
認定カウンセラー資格継続に関する事項
グリーフカウンセラー資格更新の細則案が示されたが,ヘルプラインカウンセラーの資格認定規則の同様の修正を行うこと,今後,会員への説明を行い細則の実行をどのように行っていくかについて理事長がスケジュール案を作成し次回の理事会で諮ることで了承された。
第2号議案
平成29年度共同募金(平成30年度助成事業)テーマ募金に関する事項
スケジュールについて確認し,12月26日にチラシと趣意書の発送準備を行うことを理事長から会員に協力依頼をすることで了承された。
第3号議案
2017年度グリーフワーク・デーに関する事項
2017年度の方針として,2016年度と同様に3月11日から3月16日をグリーフワーク週間として子どもの喪失をテーマとすること,アウェアネスリボンとしてバイオレットリボンを作成すること,主担当は杉山が担うことで了承された。キャンペーン当日の会場,方法,役割分担,今後のスケジュールについて審議し,理事会案として認定カウンセラー会議で議論することで了承された。
第4号議案
ゲートキーパー啓発事業に関する事項
香川県精神保健福祉センターからの香川県学校薬剤師会での研修の講師依頼があり,杉山が講師を引き受けることで了承された。
◆2017年12月17日 第62回 認定カウンセラー会議◆
【議題】
- 2017年グリーフワークデーについて、理事長より理事会案が報告され意見交換が行われた。
※花岡理事より次回のグリーフワークデー会場が子供未来館に決まった経緯について質問があり、上野理事から子供連れが多いからとの返答があった。
その事を踏まえて花岡理事から、グリーフワークデーは普及啓発事業でもあり、多くの人が行き交っているドーム下、高松駅などの方が適しているのではないかと意見があった。非営利活動といっても費用対効果の観点からビジネスモデルを確立した方が良いとの意見もあった。
1月の理事会においてグリーフワークデーについて具体的な検討を行う事になった。 - テーマ募金について
理事長から説明があり、夛田副理事長からの「郵送より手渡しが良い」とのメッセージも伝えられた。
12/26にグリーフワークかがわ相談室にて発送作業をする事が伝えられ、上野理事から発送についての説明があった。 - ひまわりミーティングについて
12/10の第2回ひまわりミーティングについて上野理事から報告があった。
【勉強会】
- 次回は「さくとさようなら」全8章を使用する事に決定し、第1章から第3章まで瀬尾理事が行う事になった。
- 花岡理事より「子どもの悲しみによりそう」という書籍が紹介され、10冊購入する事になり4月からの勉強会に使用する事に決定した。