2018(平成30)年3月グリーフワークかがわ
ニュースレター第167号(HTML版)

2018(平成30)年4月20日 グリーフワークかがわ広報部

◆第33回グリーフワークかがわ公開セミナーご報告◆


3月18日に第33回グリーフワークかがわ公開セミナーが開催されました。今回はグリーフワークかがわ副理事の夛田敏恭氏が講師でした。テーマは「葬儀からみるグリーフ」でした。まず、夛田氏の自己紹介からセミナーは始まりました。

40年間葬儀社の社長として葬儀に関わってきたこと、現在東京福祉大学心理学部に在籍中であること、日本「祈りと救いとこころ」学会の会員であることなど、夛田氏が多方面からグリーフについて学ばれ、理解を深め、実践されていることが分かり、セミナーへの期待がますます高まりました。

葬儀、宗教、スピリチュアル、グリーフの4つのテーマに分けてセミナーは進められました。


1.葬儀・・・

葬儀の形はこの40年で大きく変化しました。かつては自宅葬儀が多かったのが、現在は1%あるかないかくらいにまで減少しています。昭和後半から会場葬儀が増加し、平成に入り、一時期大規模葬儀が多くなりましたが、現在は小規模葬儀に転換しています。高松でも直葬(葬儀はしないで、火葬する)、収骨を行わない場合があるそうです。その原因として以下のことがあげられます。

家族構成(大家族から小家族へ)地域社会(自治会への入会の減少)職場環境(終身雇用の崩壊、職務とプライベートを分ける。)死生観(死が身近でなくなり死について考えなくなった。)

更に詳しく葬儀が小規模になった原因として以下の事が上げられました。

人的要因(子供の数が減り、親族が減少した。)費用的要因(高額医療の長期化により医療保険を充実する必要があるので死亡保険まで残せない。介護費用の増大など。)心理的要因(宗教儀礼に対する軽視、自信の思想を優先するようになった。)

葬儀形態とその原因として、家族のみ(今後の付き合いを拒否)無宗教(信仰心の低下、自身の思想を誇示)祭壇なし(世間の目がない、費用の捻出が困難)収骨なし(墓地がない、菩提寺がない、墓守をする家族がいない)が上げられました。

ここで葬儀の場で起こる心情について説明がありました。

故人の軌跡の振り返り(人柄、功績、志)、故人との繋がりの確認(自分との交友関係)
故人から託されたものの気づき(引継ぎ)、故人の思いの回想(残された者への思い)
残された者の思い(故人への思い)、残された者のこれから(自分の在り方)、
葬儀で得られる心の動き(満足感、充実感、使命感)


2.宗教・・・

日本の宗教の在り方についてお話がありました。

宗教(日本独自の宗教観)
多宗教(仏教、神道、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、等。信仰あるなし関係なくイベントに参加する。例:クリスマスを祝い、大みそかはお寺に行き、新年は神社に初詣に行く)
儀式宗教(冠婚葬祭のための宗教、経典、教義の低理解度 例:結婚式のためだけに洗礼を受ける)
機能不全(かつてのように心の拠り所、悩みのはけ口、人生の指針、道徳や命の教育する場となっていない。教会には懺悔をするスペースがある)
家制度(檀家制度、家制度の崩壊、お墓、仏壇、神棚がなくなる。)
宗教の役割として
祖先への供養教義教育命の教育(今は死を遠ざけようとする傾向があり、子供がショックを受けることを心配して、子供を葬儀に連れて行かない、ご遺体を見せない、触らせないことが良くあるそうです。)道徳教育墓地や仏壇、神棚があることで祖先や神仏を身近に感じることが出来る。などがあげられました。


3.スピリチュアル・・・

スピリチュアルに対する反応で多いのは疑心暗鬼、異端な世界として受け止める、冷視、軽視だそうです。その理由はスピリチュアルの意味を誤認識している場合が多く、魂や霊の存在を拒否したり、形のないものに対する不信感、死生観の個人差、(新興)宗教との混同、個性の無理解やスピリチュアルをビジネスとして使うことがあることが原因にあげられます。

ここから死を自覚した時に伴うスピリチュアルペインについての説明になりました。

信仰に関わらず死を自覚した時に4つの苦痛があると言われています。1.身体的苦痛 2.精神的苦痛 3.社会的苦痛、そして、4.スピリチュアルペインです。

京都ノートルダム女子大学教授の村田久行氏がスピリチュアルペインとケアについて研究をまとめています。スピリチュアルペインとは、自分の死を自覚した時に生じる「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」のことです。「何故自分が死ななければならないのか。」、「自分の人生は何だったのか」、「自分は死んだらどうなるのか。」などの疑問が出て来ます。

スピリチュアルペインをケアするスピリチュアルケアの方法は、「傾聴」で、大切なことは共にいること、何に意識を向けて聴くか、何故聴くのかを意識して傾聴することです。

葬儀とスピリチュアルケアの関係については、霊きゅう車の中で、ご葬儀前に、ご家族もスピリチュアルペインを体験していることを知り、スピリチュアルケアとしてご家族の言葉を傾聴しケアさせていただくことで、葬儀後のご遺族の心の状態は満足、安定、穏やかなものとなるそうです。


4.グリーフ・・・

最後にグリーフについてのお話がありました。

夛田氏はまだまだグリーフの認知度の低さを感じているそうです。グリーフが死別だけではなく、結婚、卒業、退職、定年退職によるものがあること、グリーフの対象が一人称(自分自身が受けるグリーフ)、二人称(大切な誰かが対象)、三人称(震災や事件、事故をニュースなどで知ることで、安心を喪失するなど)などの説明があり、「人生の中で起こる区切り、繋がっているものに境目が出来るのがグリーフで、そのギャップをどうのように乗り切るのかがグリーフワーク」と話されていました。

また、良かれと思った声がけがかえって傷つけてしまう場合があることの説明があることから専門家によるカウンセリングやセラピーが大切になります。

グリーフワークは自分で気づいての作業。グリーフケアは他者による支援による状態回復です。必要な時に「ケアをする人がいることを知ってほしい。」と語られました。

夛田氏ご自身のグリーフ体験をシェアし、「グリーフケアを個々ではなく、環境で行う社会」を目標に掲げセミナーは終了しました。


5回シリーズで開催してきた公開セミナーの最後にふさわしく、沢山のリアルな情報と多方面からとらえたグリーフの在り方が示されて、参加者それぞれが自分にとっての、また、これからの葬儀、宗教、終末期、グリーフの在り方について考えるきっかけになったと感じました。この後の質疑応答も宗教や葬儀の在り方など様々なテーマで大変活発な意見や質問をいただき、夛田氏のセミナーの内容の濃さと深さを感じました。

グリーフカウンセラー 戸部幸与



◆3月11日グリーフワークデーのご報告◆


  • グリーフワークデー

3月11日~3月16日はグリーフワークかがわの「子どものグリーフワーク週間」でした。

初日の3月11日(日)を「グリーフワークデー」とし、高松駅前で認定グリーフカウンセラーによる街頭キャンペーンを行いました。「子どもの声が聞こえますか?」をスローガンに子どものグリーフケアへの認識を深めていただくためにちらしとキャンペーンのシンボルであるヴァイオレットリボンを配りました。グリーフカウンセラー9名が参加し、朝10時から高松駅前の広場やサンポート高松に行く通りで道行く方々に声をかけ、ちらしとリボンをお渡ししました。

お天気に恵まれ、気持ちの良い青空の下、時々海から吹いてくる風を感じながらたくさんの方々と触れ合うことが出来ました。特にお子様連れの方が積極的にちらしを受け取り、耳を傾けて下さいました。中には「子どもたちのために使って下さい。」と募金をして下さる方もいらっしゃって、子どもの心のケアをする取り組みへの関心の高さを感じました。また、3月11日ということもあり、東日本大震災で被災した子どもたちの心のケアを心配する声も聞かれました。

100セット用意したちらしとリボンは12時前には全て配り終えて、予定より1時間も早く街頭キャンペーンを終了しました。今年で2回目になる街頭キャンペーンでしたが2回参加させていただいて、「グリーフワーク」に関心を持っていただいたり、街の方が「グリーフワーク」についてどんなイメージや思いを持っていらっしゃるかを聴かせていただくためにも継続的にこのような活動を行うことが大切だとあらためて感じました。

ちらしとリボンを手に取って下さった皆さま、グリーフカウンセラーの話に耳を傾けて下さった皆さま、ありがとうございました。

グリーフカウンセラー 戸部幸与



◆リビングwithグリーフ◆


公文書改ざんから見えてくるもの~歴史の重み~

花岡 正憲


不都合な事実を変えようと思い,タイムマシーンで過去の世界へタイムスリップする。しかし,過去の世界にはその時代を生きた人々の事情や事実認識があり,過去を変えることができず現在へ戻ってくる。そんな空想映画を観たことがある。歴史は変えられないという教訓でもある。

学校法人森友学園へ国有地が不当に安く売却されたことを巡り,政治家とその周辺の関与が疑われている。

この国有地の売却に関する公文書について,財務省は,60ページ以上,300箇所もの改ざんを認めた。政治家からの問い合わせや安倍昭恵首相夫人との強い関わりの部分がすべて削除されている。近畿財務局では,自分一人に罪を押しつけられると思った職員が自殺している。

公文書改ざんが起きる予兆はあった。公文書の開示請求や国会への提出に際し,一部黒塗りから,最近は,ほぼ全面黒塗りのいわゆるノリ弁当が目立つようになった。都合が悪いものは,はじめから出したくない。開示用に,別のものを作っておく。歴史文書を複数作って使い分けるという発想である。

開示用に大量の変更を行ったということは,内容や趣旨の異なる虚偽文書を作成したことに他ならない。同一案件の意思決定の過程に関わる歴史文書が複数あると言うことになる。法的にも一旦決裁した公文書を一言一句と言えども改ざんすることは犯罪である。刑法第156条の虚偽公文書作成罪に問われることがある。

国の歴史を恣意的に書き換えたり,偽造することはできない。これは,個人の歴史についても言えることだ。生き辛さを感じたり今の生き方に自信が持てなくなったときに,自分史の書き換えを試みるやり方はある。ナラティブ・セラピー(物語療法)は,問題を解決することではなく,自分史の新しい解釈によって新しい意味を発生させる。言わば自分史の上書きである。

しかし,こうしたやり方が,必ずしも成功するとは限らない。人は他者との関係の中で生きている。自分に都合よく書き換えようとしても,他者の事情や体験の事実認識は変えられない。自分史の書き換えと独りよがりな改ざんとは異なる。国も国際社会の中で生き辛くなった時,歴史解釈を変えようとすることがある。この書き換えは,歴史修正主義として批判を受けることがある。

この選択は間違っていないのだろうか,このままでは将来不都合なことが起きるのではないか,と言った不安や迷いがあるからこそ,人は今と言う瞬間を真剣に生きようとする。複数の生き方を都合よく使い分けるなんてことは,できるわけはない。

歴史とは,ある結論を引き出すための手段ではない。インシデントの積み重ねという過去の記憶である。公文書の改ざんは,歴史,言わば人の生き方に対する考え方が,根本的に間違っている。異なる歴史文書が2つ作られたという歴史が残ったことだけは確かだ。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・4・12



◆2018年3月11日 第117回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2017年度事業報告と2018年度事業計画案に関する事項

会計担当理事より,平成29年度香川県地域自殺対策強化事業費補助金収支予算書が示され,事業報告収支決算は平成30年3月17日に事務局会議を経て収支決算の見込みと2018年度予算案を提出できるよう準備予定とする。今後は4月の理事会に再度議案として提出後,監査予定とすることで了承された。

第2号議案

事務局員確保に関する事項

2018年3月18日開催予定の2017年度認定カウンセラー拡大会議において, 事務局員の募集について議題として取り上げ,詳細を説明予定とする。事務局および会計事務の業務内容を説明,報酬について提示し,法人内部で募集をかける予定として承認された。

第3号議案

2018年度のAIYAシステムへの契約に関する事項

2018年度のAIYAシステムとの契約について,AIYAシステムから提示された料金表,見積りと納品兼見積書を基に2018年度の契約について審議を行い,ホームページの掲載方法等について再度交渉することで了承された。

第4号議案

モデル事業「喪失を経験した子どもの親・保護者グループ」ひまわりミーティングに関する事項

2018年度も毎月第1日曜日を開催日として引き続き継続開催していく計画とし,運営の人員としては,認定カウンセラー拡大会議において募集し,新規入会員にも呼びかけを行っていく予定とすることで了承された。また,会場,開催日程,時間,について,本年度と同様の内容とすること,4月のグループミーティングはホームページなどでの広報を中心として,チラシ掲載は5月以降の日程で作成予定とすること,配布先に関しては県・市教育委員会を中心に発送先に追加することで了承された。

第5号議案

2017年度グリーフカウンセラー拡大会議に関する事項

2018年3月18日開催予定の2017年度グリーフカウンセラー拡大会議について議題及び配布資料の確認を行った。また,議題に「事務局員募集」の項目を追加することで承認された。尚,2018年度実務者研修事前研修は,2018年4月26日(19時~)と4月29日(13時半~)の予定とし,拡大会議でも周知を行う。



◆2018年3月18日 第65回 認定カウンセラー会議◆


2017年度認定カウンセラー拡大会議

  • 2017年度に新たに認定されたグリーフカウンセラーを加えて拡大会議を開催した。
    ・グリーフワークかがわの活動,募金活動,2018年度の事業計画案,2018年度実務者事前研修の案内,事務局員募集について説明と,認定カウンセラー会議の説明が行われた。
    ・勉強会について,4月から使用する文献の紹介があった。


文献:「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」

ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリー・ランドン 著

水澤都加佐、黒岩久美子 訳 大月書店