2018(平成30)年12月グリーフワークかがわ
ニュースレター第176号(HTML版)

2019(平成31)年1月22日 グリーフワークかがわ広報部

~第34回公開セミナー報告~


2018(平成30)年 11月18日(日)、丸亀町カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 高松丸亀町壱番街東館4階)におきまして、第34回公開セミナーが開催されました。 松山からグリーフワークかがわ顧問で、臨床心理士、米国認定カウンセラーである溝淵由理さんをお招きし、『被災地のグリーフワークとグリーフケア』~できることから始める私の一歩~というテーマでご講演いただきました。県内から25名の方にご参加頂きました。

ご講演では平成30年7月の西日本豪雨災害を例に、「被災による喪失(ロス)とは」、「トラウマ反応やPTSD」、「自分でできるグリーフワーク」、「悼む人を支えるグリーフケア」、「災害に備えるためにできること」についてご説明いただきました。

参加された皆様からのご意見では、学校の避難マニュアル作成に関わっている防災士の方から、「学校での避難訓練の際、子どもたちが『怖かった』という場を提供したいと思うが、現状ではできていない」ということでした。溝淵さんからは、「学校は訓練がスムーズにできること、子どもたちが行動を身に着けることが重要視される。これから、そのような場を設けることが出来たら、とてもよいと思う」というコメントをいただきました。

また、「友人や家族が亡くなった時、どういった言葉がけをしたらよいのでしょう。寄り添い型の支援とはどういったものでしょうか」というご質問がありました。溝淵さんからは「ケースバイケース。まずは傷つけない。傷つけるくらいならしないほうがよい。喪失を経験された方々からは『いてくれるだけで助かった』、『耳を傾けてくれる人がいた』という意見が多い。相手の方のニードを見極めて対応することが大切。無理に話をさせるのではなく、相手主体で考え行動しましょう」とアドバイスをいただきました。

最後に、気持ちを落ち着かせるためのセルフケア(呼吸法)を教えていただき、参加者全員で行いました。

今回のセミナーを通して、災害など極度な緊張を強いられる時、自分を取り巻く環境や自分自身の状況を正しく判断する必要がありますが、心身を落ち着かせて自分をコントロールすることはとても難しいことだと思います。まずは安全を確保する。次にセルフケア(呼吸を整えるなど)を行い、自分の体や気持ちに素直に耳を傾ける。その中で正しく怖がることや助けを求め受け取る力を持つことはとても大切だと学びました。そして被災者の支援をする時には相手のニードに寄り添い、災害に備えて今できることをすることが大切だと教えていただきました。特に「呼吸を整える」はいつでもどこでも行うことができます。今回体験してみて、深呼吸を1回、2回・・・と繰り返すうち、すぅーっと気持ちが落ち着いてきました。日々慌ただしく過ごされている方も多いと思います。皆様もご一緒に深呼吸してみませんか。

最後に、講演で教えていただいた言葉を添えて。ニーパーの祈り「神様、私にお与えください。変えられないものをそのまま受け入れる落ち着きを。変えられるものを変える勇気を。そしてその二つを見分ける賢さを」


グリーフカウンセラー  児玉 ルミ子



◆リビングwithグリーフ◆


あおり運転~中断と変更のストレスと付きあう~

花岡 正憲


進路妨害を繰り返し,追い越し車線に無理やり停車させたことで死亡事故を招いたとされる一件があって以来,あおり運転が注目を集めるようになった。あおり運転とは,「前方の車に対して,もっと速く走るよう促す行為」のことで,このところの逆恨みからくる危険運転や器物破損,暴力行為などをあおり運転と関連づける扱いには,違和感を覚える。

あおり運転は,あおりたくなる心理から出たもので,腹立ちやイライラの原因が,他車の不快な行動にあることが多く指摘されている。あおり運転に対する取り締まりを厳しくする厳罰主義や一罰百戒といった一元的なやり方で,あおり運転が減少するわけではない。後続車の運転手の不寛容をとがめるだけでは,かえって無理な割込みやノロノロ運転など,マナーが悪い運転や迷惑運転の誘発を招きかねない。

そうした中で,あおり運転ドライバーの心理分析やあおり運転を避けるために,と言った視点で,マスメディアでも特集が組まれるようになった。あおりたくなる心理とは何かといった行為主体の事情からこの問題を冷静に向き合ってみることは,未然防止においても大切な視点である。

後続車にパッシングライトを点滅されたり,車間距離を詰められ,怖い思いをした人は少なくない。その一方で,自分の運転が相手に不快感を与えたかもしれないと思うことがあるのも事実であろう。

右左折などで車の流れに割り込んできた車が,後続車に対して,ハザードランプを点滅させることがある。本来ハザードランプは,緊急時の駐停車の際に使うもので,こうした使い方には異論があるところだが,後続車に対する謝意だけでなく,入り方に少し無理でがあったと感じたとき,後続のドライバーの不快な感情をフォローしておきたい意図でも使われているようだ。

助手席の人が「前の車なにをちょろちょろ走ってるのかな」と言ったつぶやきを耳にしたドライバーもいることだろう。行為としての「あおり」は,認められるものではないが,あおりたくなる心理は,誰にでもあることだ。

人は,いつも計画を立てて行動しているとは限らない。しかし,一定の予測性の中で行動をとっている。そうしたことから,例えば,ルーティンワークの中に,急ぎや予定外の仕事が割り込んでくるのはストレスになる。来客中の電話,公共交通の遅れ,人事異動など,中断や変更はストレスになる。現代社会における複雑なストレスと呼ばれるものには,日常生活での中断や変更が起こりやすく,予測性が混乱したり見通しが失われてしまったりすることからくるものが少なくない。

スーパーマーケットのレジで精算を済ませ,つり銭とカードを財布の中にしまおうとしていると,次の客が真横から手を伸ばし,つり銭トレーにカードや現金を置こうとする。レジ係も次の客の精算作業を始める。こうした場面では,相手のあおる意図の有無にかかわらず,あおられた思いになり焦ってしまうこともあるだろう。

人はそれぞれの事情の中で生きている。ドライバー同士の関係の基本は,「あなたが自分のペースで運転することを妨げる積りはないが,私も自分のペースで運転したいことも分かって欲しい」である。通路やエレベーターの出口など,進路をふさいでいる人がいるときは,「通ります」「失礼します」と声をかけることができる。しかし,車の運転となるとそうはいかない。

社会福祉におけるバリアーフリーは,それぞれの事情の中で生きている人々の生き辛さをできるだけ少なくして,全体を均一化(ノーマライゼーション)し,それを当たり前の社会として行こうという理念が基本になっている。

自分を基準にして,無前提に他者に寛容を求めるとか,他者の不寛容を責めることでは実現しない。バリアーフリー社会は人づくりから,と言われる所以である。

あおり運転は,前の車のせいで,自分の見通しが損なわれそうになったと感じた時に,苛立つ感情が抑えられず起こしてしまう行為である。変更や中断が起きると,多かれ少なかれ,人は普段とは違う心理状態になる。現代社会を生きる上で,自他を問わず異常な行動にいたる心理過程を追えることが欠かせない。それが,あおり運転を少なくする近道でもあるのだろう。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・12・26



◆グリーフワークかがわ公開セミナー第37回のご案内◆


  • 第37回公開セミナーチラシイメージ

日 時:2019年2月17日(日)13時00分~14時30分

会 場:丸亀町商店街カルチャールーム

テーマ:小さな命を想うとき

講 師:中里陽子(看護師ポゴスママの会中四国代表グリーフワーク認定カウンセラー)
ローマ真由子(ポゴスママの会たかまつ代表グリーフワーク認定カウンセラー)


【内容】

ペリネイタル・ロスとは
「流産・死産・人工死産・新生児死亡・人工妊娠中絶などお産をとりまく赤ちゃんの喪失」という意味で使われる言葉です。小さな命を亡くした私たちが歩んできたグリーフワークを通して、みなさまに経験者の思い、そして、1人でも多くの方にペリネイタル・ロスのケアについて知っていただく事で何か感じていただける時間になればと願っております。


~2018年度公開セミナーの開催日程~

回数 開催日 講師 テーマ
第34回 2018年
11月18日(日)
13:00~14:30
溝淵 由理 被災後のグリーフワークとグリーフケア
第35回 2018年
12月16日(日)
13:00~14:30
瀬尾 憲正 在宅での看取り
第36回 2019年
1月20日(日)
13:00~14:30
上野 美幸 大切なものを失った子どものこころ
第37回 2019年
2月17日(日)
13:00~14:30
中里陽子
ローマ真由子
「小さな命を想うとき」
~ペリネイタルロスのグリーフを通して~
第38回 2019年
3月3日(日)
13:00~14:30
夛田 敏恭 思ったより近くにある死別と喪失感
  • 会場:丸亀町商店街カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 壱番街東館4階)
  • 参加費:500円(当日会場でお支払い下さい)
  • 企画運営:認定NPO法人 グリーフワークかがわ
    電話090-6288-1011
  • どなたでも参加できます。事前予約不要



◆2018年11月28日 第126回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

ラジオ放送での発言内容に関する事項

当法人の役員が出演したラジオの生トーク番組の内容について,会員から疑義が寄せられたため審議を行った。その結果,意見を寄せられた会員とともに役員が放送録音を再生し確認することで了承された。

第2号議案

新書籍の頒布に関する事項

税務署に確認した結果の報告があり,新書籍についても普及啓発事業として,冊子頒布という形で行うこととし,定価の表記も行わないことで了承された。



◆2018年12月9日 第127回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

ラジオ放送での発言内容に関する事項

理事長から第126回理事会後の経過が説明され,話し合いの時間を確保する予定であることが説明された。また,今後の広報活動について,事前の打合せなど留意事項を確認することで了承された。

第2号議案

講師派遣依頼(技術援助事業)に関する事項

多度津町社会福祉協議会から2019年3月4日開催の傾聴ボランティア講座の講師派遣依頼が寄せられており,講師は青井恵子氏が,アシスタントとしてローマ真由子理事が依頼を受理していることが報告され,了承された。

第3号議案

NPO法人設立10周年記念行事に関する事項

2019年は当法人がNPO法人設立(2009)から10周年となることから記念行事を開催する予定とし,会場を丸亀町レッツホール,開催日を2020年2月とすること,10周年記念行事実行委員会を立ち上げること,10周年記念誌についても実行委員会で作成を企画検討していく予定で了承された。

第4号議案

会計業務に関する事項

来年以降の会計担当については,今後も随時審議予定とすることになっているが,今年度中は経理状況を理事会に出席し適時報告してもらうよう要請することで了承された。



◆2018年12月16日 第74回 認定カウンセラー会議◆


  1. 2018年度実務者研修について
     事例検討,スーパービジョン等の研修を積極的に行っていくことが確認された。
  2. 2018年度香川県共同募金会テーマ募金について
     1月から3月末までの期間に行うテーマ募金について,準備状況の説明があり,会員の積極的な募金活動の呼びかけを行った。
  3. NPO法人設立10周年記念行事について
     第127回理事会で審議された内容について理事長より説明があり,2019年度事業として記念事業を行うこと,新たに認定されるカウンセラーを含めて実行委員会を立ち上げて具体的に企画していくこととなった。
  4. バリア―フリーの会場確保について
     相談室の段差がある箇所の幅や高さを測定すること,段差解消のためのスロープの種類,設置方法,設置する場合の電話相談や対面型相談の位置関係,費用等について情報収集を行う。
  5. カウンセリングの現場での状況報告と課題について
     電話相談,対面型相談いずれも,対応可能なカウンセラーが少ない現状がある。積極的な取り組みを行うよう声掛けをしていくことと実務者研修を重ねていくことの必要性について議論された。


【勉強会】


使用文献:
使用文献:「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」
ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリ―・ランドン著
水澤都加佐、黒岩久美子訳
2014年大月書店

担当:吉田亜紀子
範囲「パート4第21章から第25章」

この本では、発見から完結へ向かう方法の一つとして、亡くなった方に対して手紙を書くという方法が挙げられている。

その際、伝えられていない情緒的な思いと感情を、子どもが表現するのを助けるために、四つの基本的なカテゴリーが示されている。「ごめんなさい」といった謝罪、「あなたを許しますよ」という許し、言う必要のある情緒的な言葉、「ありがとう」といった楽しい記憶である。

今回のディスカッションでは、これらのカテゴリーへと導くには、出来事リストを使用すれば、手紙を書く手助けになるのではないかとの意見があった。楽しかった事、悲しかった事、嫌だと思った事、安心したと思った事、そのような事を基に大人と子どもは、共に出来事リストを作っていくのである。

そして、謝罪や許し、情緒的な言葉、楽しい記憶を当てはめ、手紙を書く。こういった一つ一つの想い出を共に出していくことが、子ども達が発見から完結へと向かう大切な行動だと私は考える。

次回の勉強会は,パート5 第26章から第29章、吉田が担当する。