2019(平成31)年2月グリーフワークかがわ
ニュースレター第178号(HTML版)

2019(平成31)年3月13日 グリーフワークかがわ広報部

第64回四国公衆衛生学会総会・平成30年度四国公衆衛生研究発表会(香川)発表報告


平成31年2月8日高松市サンポートホール高松において、第64回四国公衆衛生学会総会・平成30年度四国公衆衛生研究発表会が開催されました。四国公衆衛生学会は主として地域保健・医療・福祉及び環境の行政、民間の関係者、大学や研究機関、教育機関の教育研究関係者により構成されている学会です。今回の総会では「超高齢社会と四国の公衆衛生2019」をテーマに、基調講演・シンポジウムが開催され、地域医療や地方都市での医療、へき地医療などについて講演、討議されました。一般演題についても、行政を中心とした地域保健の現場での研究や報告が関係者からなされました。


当法人からは、一般演題「喪失を経験した子どものグリーフケアのための親・保護者の支援に関する地域活動報告」として、ひまわりミーティングの活動報告を行いました。夛田敏恭副理事、ローマ真由子理事、花岡正憲理事、杉山洋子理事長を共同演者とし、筆頭演者として上野美幸がポスター発表を行いました。

2017年から1年間取り組んだ、喪失を経験した子どもの親・保護者のためのグループミーティング『ひまわりミーティング』相談事業の取り組みとその結果、今後の課題について発表し、25名の参加がありました。ひまわりミーティングでは、これまでの参加者は少ないものの、親・保護者自身が、子どもの喪失体験について語ることで、親・保護者自身もグリーフワークの過程を歩んでいることに気づきを得る場面が多くみられています。大人が自身のグリーフワークに取り組むことは、子どもの悲嘆を理解・受容することを助け、子どものグリーフワークが促進されると考えられるとの考察を発表しました。発表後は相談事業について質疑応答も行われ、市の職員の方からのご質問もいただきました。子どものグリーフケアの重要性を地域社会にいかに普及啓発していくかについては、検討課題が残されていますが、今回の発表が相談事業の一助になれば幸いです。最後に、今回の発表にご協力いただきました皆様、ひまわりミーティングの運営にご協力いただいているグリーフカウンセラーの皆さまに感謝いたします。


グリーフカウンセラー 上野美幸



◆認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会との意見交換会◆


2019年1月31日(木),認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 代表理事の関口宏(ひろ)聡(あき)氏からのご提案により,NPO活動の現状と課題についての意見交換会が開催されました。場所は当法人の相談室で,出席は,認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 関口宏聡代表理事と,認定NPO法人マインドファーストから島津昌代理事長,NPO法人子どもの虐待防止ネットワーク・かがわから橋本美香副理事長,当法人からは夛田敏恭副理事長,村上美智子理事,理事長の杉山洋子が出席しました。認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会はNPO活動に関する情報発信を行ったりNPO法人運営の支援,認定NPO法人の設立のための支援を行い,法制度制定のための活動も行っている団体です。

それぞれの法人の活動内容について説明と質疑が行われ,引き続いて課題について話し合われました。活動のための資金の確保,広報の方法,事務局体制について,関口氏からは,行政機関との連携の方法や企業への募金活動,情報収集についての助言がありました。メンタルヘルス領域の地域の課題を地域で解決していくために,我々NPO法人や市民グループの協働は欠かせません。それぞれの知恵を経験を持ちより学び合うことで,いま何が必要とされているのかを確認しつつ,それぞれの特性を発揮し,活動を拡げていけるのだと思います。たとえ時間がかかろうとも,原点を忘れず,同時に,進む方向を見失わず,地域のメンタルヘルスの課題に取り組む活動を積み重ねていきたいと思います。

(文責 グリーフワークかがわ理事長 杉山洋子)

認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会HP: http://www.npoweb.jp/

認定NPO法人マインドファーストHP:https://www.mindfirst.jp/

NPO法人子どもの虐待防止ネットワーク・かがわHP:http://kcapn.sakura.ne.jp/



◆技術援助 公益社団法人かがわ被害者支援センター 支援相談員研修 報告◆


2019年2月12日(火)公益社団法人かがわ被害者支援センターの支援活動員継続研修にグリーフワークかがわから講師として杉山が派遣され,「グリーフケア・悲嘆と向き合う」をテーマとして講義と演習を行いました。会場は香川県社会福祉総合センター6階研修室,受講者は相談員14名でした。

前半はグリーフワークとグリーフケアについて解説を行い,後半は仮想事例を用いて3人一組でロールプレイを行いました。仮想事例は,性被害に遭った女性の母親からの相談という事例で,クライエント,相談員,観察者の役割をそれぞれ一回ずつ経験するというやり方で行いました。一つの役割を行うごとに各グループで感想を話し合い,最後に一人ずつ感想を述べていただきました。ロールプレイを繰り返すことで,クライアントが何を大切にしてきたか,クライエントが失ったことは何なのかということについて焦点化されていきました。演習と意見交換を通して,仮想事例の文面には表れていないクライアントの気持ちにも想像を広げ,その人にとっての喪失に気づき,寄り添う重要性を確認し合えたと感じました。

(文責 杉山洋子)



◆技術援助 ゲートキーパー普及啓発事業報告◆


2019年2月14日(木)香川県薬剤師会朝日町会館において香川県精神保健福祉センター主催によるゲートキーパー普及啓発事業が行われ,当法人から講師として杉山洋子,村上美智子が派遣されました。テーマは「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」,受講対象者は学校薬剤師33名でした。

まず,主催者として,精神保健福祉センターの業務の紹介,精神保健福祉に係る制度についての説明と自殺関連統計の概要説明がありました。引き続き,グリーフワークかがわから講義とグループワークを行いました。講義では,ファクトシート「自殺に関する神話 10の間違い」「自殺を考えている人とその家族や友人のために」(認定NPO法人マインドファースト提供)を引用し,心身の危機を招く背景のひとつとして,人生における喪失と悲嘆の過程について解説を行いました。他の人にとっては取るに足らないできごとでも,自殺を考える人にとっては心のバランスを崩し,事態を左右されることがある,そうした例を説明しました。後半はワールドカフェ方式で,「現在の自殺について何が問題か」と「あなた自身にはなにができそうか」についてグループディスカッションを行いました。それぞれのグループで,一人ひとりが日々の業務の中での場面を想定し,具体的に何ができるかについて検討され,発表を聴く中で,自殺というテーマについて話し合う時間を作ることの意義深さをあらためて認識しました。

(文責 杉山洋子)



◆リビングwithグリーフ◆


結婚への覚悟

花岡 正憲


日本国憲法第24条には,「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない」とある。

憲法24条で規定されている「婚姻」には,同性婚について何も言及していないため,同性婚の法制化は憲法上禁じられていない。同じ性別の相手と結婚することを認めないのは憲法に反するとして,2月14日,13組の同性カップルが国を相手取り,損害賠償を求める訴訟を4つの地裁で一斉に起こした。

2013年,ニュージーランドで同性婚を認める法律ができた。このとき,モーリス・ウィリアムソン議員が行なったスピーチは有名だ。「この法案に反対する人に私は約束しましょう。明日も太陽は昇るでしょうし,明日住宅ローンが増えることはありませんし,皮膚病になったり湿疹ができたりもしません。布団の中からカエルが現れたりもしません。明日も世界はいつものように回り続けます。だから,大騒ぎするのはやめましょう。この法案は関係がある人には素晴らしいものですが,関係ない人にはただ,今までどおりの人生が続くだけです(中略)」と言うものだ。

婚姻は異性婚だけなのか,同性婚も含まれるかは,法律論として本質的問題ではないだろう。かつての婚姻は,当事者の意思が曖昧で,親族や地域社会など第三者の圧力によるものが少なくなかった。婚姻とは,当事者双方が明確な意思を持った合意によるものであるというのが,憲法の本来の趣旨である。

地域振興を目的とした街ぐるみの大規模な合コンイベントが,全国で開催されるようになった。婚活の謳い文句は,本気で結婚を考えている人のためとなっている。婚活パーティでの成婚率は20人中1人と言われる。この数字だけで,合コン参加者がどれだけ本気で結婚を考えているかを推し測ることはできない。しかし,婚活などで知り合ったばかりの男女にしろ,交際期間が長いカップルにしろ,一方が,結婚の意思を明確にすることで,相手の結婚への意思の曖昧さが浮き彫りになることが少なくない。

結婚してからも,自分の部屋でパソコンやったり,一人旅をしたりする時間が持てるだろうか,家事が仕事の邪魔にならないか,将来相手が不倫したり,離婚するようなことにならないかなどと,結婚への躊躇が語られることがある。当然とはいえ婚姻における当人の意思が尊重される時代だけに,結婚に対する情緒的に未解決な思いがストレートにあらわれやすくなっていると見ることもできよう。

英語に「You can't have your cake and eat it too.」と言うことわざがある。ケーキを持つことと食べることは同時にできない。つまりケーキは食べたらなくなるということから,良いとこ取りをすることはできない,一挙両得はできないということだ。

ボキャブラリーに関するある男女差調査によると,女性は,男性よりも家族に関する語彙が圧倒的に豊富であることが明らかになっている。普段から女性は家族や家庭を持つことに関心が高く,家族研究の分野では,夫婦や家族に問題が起きた時,この問題に真剣に向き合おうとするは女性であると言われている。

結婚の選択は,再生のための喪失が伴う。新たな価値あるものを得るために,古き良きものを捨てることへの未練は,男性の方に強いようだ。結婚という社会的義務の遂行を猶予したいというモラトリアムが,両者の合意を困難にしている場合が少なくない。

20歳から30歳に一緒になったカップルが,その後数十年間,円満に添い遂げられ完全なる結婚は幻想でしかない。結婚生活の過程で,同床異夢に気づかされることもあろう。それでも,離れたくない2人が,困難はあっても価値観や考え方が異なる相手と真剣に生活を共にすることを選ぶ。結婚には,こうした覚悟が求められ人生課題なのだろう。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2019・2・28




◆2019年2月10日 第130回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2018年度事業実績と収支決算の見込みに関する事項

理事長から示された2018年度事業実績の確認と1月現在の預金額と現金について報告があった。事務局会議を経て3月の理事会にて収支決算報告予定としている。

第2号議案

2018年度テーマ募金に関する事項

2018年度テーマ募金の目標額は50万円となっており,2月4日現在の寄付は25件,163,000円であることが理事長より報告された。今後の募金活動について法人内での対応とともに香川県共同募金会にも検討を依頼することで了承された。

第3号議案

ラジオ放送での発言内容に関する議事録の表記に関する事項

この審議内容に関する議事録の表記について,第128回議事録案及びニュースレター掲載案が示され,理事で確認を行い了承された。

第4号議案

新書籍に関する事項

来年度発行予定の新書籍について,社会資源のリストの掲載の必要性について検討した結果,掲載しないことで了承された。

第5号議案

事務局作業の分担について

現在,理事長が兼任している事務局長の事務作業について,今後の役割分担について検討した。認定カウンセラー会議の議題として担当割りを検討していく方針で了承された。来年以降の会計担当については,今後も随時審議予定とすることになっており,現任の会計担当者には経理状況を理事会に出席し適時報告してもらうよう要請することで了承された。




◆2019年2月17日 76回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の広報について
     相談事業の利用者が減少している件について,広報や普及啓発について検討を行った。
  2. 2018年度認定カウンセラー拡大会議について
     今年度に認定になったグリーフカウンセラーを加え,3月17日に開催する認定カウンセラー拡大会議の役割分担を行った。
  3. 実務者事前研修について
     作業スケジュールと役割について話し合った。
  4. グリーフワーク・デーについて
     3月10日にJR高松駅前で街頭キャンペーンを行うことについて周知を行った。
  5. 4月以降のカウンセラー会議での勉強会の文献について
     2017年度と2018年度は子どもの喪失をテーマに文献を取り上げた。カウンセリングの基本,傾聴の基本についての学習を希望する意見があり,文献の候補を検討していくこととなった。


【勉強会】


使用文献:
使用文献:「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」
ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリ―・ランドン著
水澤都加佐、黒岩久美子訳
2014年大月書店

担当:吉田亜紀子
範囲「パート5第26章から第29章」

パート5では,死ではない喪失について扱っている。引越しと両親の離婚が挙げられているが,今回は,両親の離婚による喪失について読み進めディスカッションを行った。両親の離婚に遭遇する子ども達は,さまざまなものを喪失する経験をする。例えば,信頼の喪失,安全性の喪失が挙げられる。また,子ども達は自分がもっといい子で,よりよい事をしていたら,親は離婚しなかったかもしれないという自分を責める場合がある。

子どもだけをカウンセリングをしても分からない現実がある。とても難しいものである。子ども達の置かれている背景を知り気づくことが大切だと今回学んだ。


次回の勉強会は「パート6第30章から第32章」。吉田担当。