2019年(令和元年)12月グリーフワークかがわ
ニュースレター第188号(HTML版)

2020年(令和2年)1月9日 グリーフワークかがわ広報部

◆グリーフワークかがわ公開セミナー第39回のご案内◆


日 時:2020年1月19日(日)13時30分~15時

会 場:丸亀町商店街カルチャールーム

テーマ:もしものときのための「人生会議」

講 師:瀬尾憲正(開業医在宅療養支援診療所院長グリーフワーク認定カウンセラー)


【内容】

自ら望む人生の最終段階の医療・ケアについて話し合ってみませんか。


~次回のセミナーの開催日程~

回数 開催日 講師 テーマ
第40回 PDF 2月16日(日)
13:30~15:00
童銅啓純 仏教的グリーフワーク~心が私を作り出す~ PDF


 リビングwithグリーフ 


子どもと若者を支援する~期待の修正~

花岡 正憲


統合失調症は,体質的にストレスに弱い人が,多くが思春期の思いがけない生活上の変化などによるストレスで病気になると言う。統合失調症は,こうしたストレス脆弱モデルで説明されている。したがって,再発を防ぐために,家族に対して,治療パッケージの一環として,患者への期待を修正するなど,過剰な刺激を避けるための心理社会的アプローチが有効とされる。

ストレスに対する脆弱性が高くなくとも,一般には,日常的に不快刺激にさらされ続けると,精神的健康に否定的な影響が起きてくる。今日,社会問題になっているゲーム障害も,ゲーム行為だけに目を奪われて,その背後にある子どもや若者が受けているストレスを見過ごされがちである。

親や大人たちは,子どもが,ちゃんと学校へ通い,宿題も忘れず,テストでは1点でも良い点を取らせることを主要な課題と考えがちだ。こうした大人の感覚は,「上級国民」と言う言葉に象徴されるように,階級社会のより序列の高い所へ登ることが,人の生き方として成功モデルだという思い込みによることがある。子どもの悩みや子どもが大切にしていることには目が向かず,やがて子どもは燃え尽きて,学校を休みがちになる。

若者は,情報化と価値観の多様化の中で,かつてのように家族や学校などの集団に,アイデンティティ(自分らしさ)を求め難くなっている。一方,近年,社会が若者に求める知識や技能に対する要求水準は,より高くなっている。社会へ出て行くために子どもに与えられたモラトリアムの期間が,長くなっても不思議でない。

若者は,かつてのように社会への移行過程が直線的ではなく,より長期間を半依存状態で過ごすようになっている。社会への移行過程が不安定になることからくるストレスが,長期的に精神的に不健康な状態をもたらす。こうした観点から若者に関する社会学的な分析も行われている。

若者は,一旦燃え尽きると,その回復とアイデンティティの再発見までには,かなり時間がかかるものである。長いひきこもりの後,当人なりのトライアルをはじめたところ,周りの大人は,正社員の仕事に就かせること,資格をとらせること,大学へ進学させることなど,序列社会のレールに戻ることを急がせがちだ。ひきこもりが長引いたり,家の中に居場所がなくなり親への暴力が始まったりする背景にはこうした事情があることは否定できない。

昨年6月3日,44歳になる長男を刺殺し,殺人未遂容疑で76歳になる元農林水産事務次官の父親が逮捕された。長男が殺害された6月1日,父親の家の近くでは,小学校の運動会が開催されていた。親元へ帰ってきていた長男が「運動会がうるさい」と言い出し,父親がたしなめたところ,「ぶっ殺すぞ」と反発,小学校に乗り込むという言動があったため,犯行に及んだという。

長男は,これまで仕事をせず,ひきこもっていた。中学に入学した頃から母親に暴力を振るうようになったが,大学進学を機に独り暮らしをはじめてからは,父親が月に1度は苦手なゴミの片付けの手伝いに通い,定期的に長男の状況を主治医に伝え,処方箋を届けるなど,長年世話を続けてきたと言う。半依存状態の子どもを抱え込んで苦悩する親に共通する姿が見えてくる。

子どもや若者が自分らしさを見いだせるようになるためには「期待の修正」は欠かせない。期待の修正は,子ども生き方が自分自身の人生の一部になってしまっている親にとって容易でないことも事実だ。両親が期待の修正を共有できていないことによる混乱も少なくない。パターナリズムに陥り孤立する親を支える相談の窓口が,私たちの社会には圧倒的に少ない。

ひきこもりに陥るきっかけは,多くが不登校だが,受験や就活の不調,退職などがきっかけになることもある。子どもや若者の声に耳を傾けるために,家族だけでなく,学校,職場など,支援に関わる人自身が,期待の修正を妨げているものが何かに気がつくことが何よりも大切だ。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2019・12・28




募金活動にご協力をお願いします

大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト募金
見逃していませんか,子どもたちの悲しみのサイン・・・。

私たちは人生のさまざまな局面で喪失を経験します。子どもたちも大切な人や,かけがえのないものとの別れを経験しています。家族の死,離別,家族の病気,自分の病気,友だちの死,友だちや自分の転校,引っ越し,大切にしていたペットの病気や死,災害,事故,事件。

私たちグリーフワークかがわでは,喪失を経験した子どもたちが,新たな希望への道を歩んでいくための支援活動を行っています。その活動資金のために,1月1日から3月31日まで社会福祉法人香川県共同募金会のテーマ募金に参加します。お寄せいただいた募金は,喪失を経験した子どもを支える人のグループミーティングや啓発活動の資金として役立たせていただきます。

テーマ募金のチラシ
赤い羽根共同募金:大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト募金チラシ
PDF

詳しくは,グリーフワークかがわ事務局までお問い合わせください。振込用紙を含めたチラシをお送りさせていただきます。(事務局:090-6288-1011)

このご寄付につきましては,税制上の優遇措置の対象となっております。

  • 個人: 所得税について,下記のどちらかを選択できます。
  • 所得控除を選択した場合:(合計寄付金額-2,000円) を年間所得から控除
  • 税額控除を選択した場合:(合計寄付金額-2,000円)×40% を所得税額から控除
  • 法人: 一般寄付金の損金算入限度額とは別に,特別損金算入限度額の範囲内で損金として算入することができます。

私どもの活動趣旨へのご理解と活動推進のための経済的なご協力を賜りますよう,何卒よろしくお願い申し上げます。



◆2019年12月8日 第140回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

香川県子ども若者孤立化防止支援事業に関する事項

 配布資料:「平成31年度子ども・若者孤立化防止支援事業」「子ども・若者孤立化防止支援事業補助金交付要綱」

 参考URL: https://www.pref.kagawa.lg.jp/seishonen/kirakira/pg159.html
第85回認定カウンセラー会議における議論の中で提案のあった「子ども・若者孤立化防止支援事業」について来年度の申請について検討し,継続審議となった。

第2号議案

認定NPO法人更新申請に関する事項

配布資料:「グリーフワークかがわ記録票 認定NPO法人更新申請手続きに関すること」
2020年7月27日を期限とする認定NPO法人認定の更新を行うことで了承された。杉山理事長より,事前の情報収集を目的として2019年11月22日に村上理事とともに香川県政策部男女参画・県民活動課を訪問し,担当者と協議を行ったことの報告があり,今後,事務局を中心に認定更新の準備作業を行い,必要に応じて香川県の指導を求めていくことで了承された。

第3号議案

香川県共同募金会令和元年度テーマ募金(令和2年度事業)に関する事項

担当理事から今年度の募金チラシが搬入されたことが報告され,12月27日に発送準備を行い,12月30日を目処に発送する予定であること,発送先についてはとりまとめ作業中であること,発送作業は会員に協力を呼びかけることで了承された。

第4号議案

図書購入に関する事項

認定カウンセラー会議の勉強会で使用する文献について,『ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化 島薗進 2019 朝日選書』を使用すること,香川県地域自殺対策強化事業補助金で計上している図書購入予算で購入することで了承された。また、瀬尾理事より『もしも一年後、この世にいないとしたら。 清水研 2019 文響社』の推薦があった。




◆2019年12月15日 第86回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
     11月の相談事業について現状報告があった。
  2. 認定カウンセラー資格の更新手続きについて
     当法人認定のカウンセラーは認定規則に従い2年ごとの更新が必要である。2020年3月31日が有効期限の現任カウンセラーの資格更新についての説明があった。
  3. NPO法人取得10周年記念事業 第6回実行委員会について
     2019年12月16日(月)に開催の委員会について周知があった。
  4. テーマ募金の発送準備作業について
     1月1日から3月31日まで行うテーマ募金について,12月27日にチラシと趣意書を発送準備を行う旨の説明があった。
  5. カウンセラー会議での勉強会の教材について
     島薗進 著「ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化」に決定した。