2020年(令和2年)6月グリーフワークかがわ
ニュースレター第194号(HTML版)

2020年(令和2年)7月15日 グリーフワークかがわ広報部

 リビングwithグリーフ 


マスクの記号学

花岡 正憲


仮面舞踏会は,仮面をつけて素性を隠して行われる舞踏会で,ルネサンス期のイタリアではじまり,18世紀には欧州全土の宮廷で行われるようになったイベントである。人物の特定がし難くなる装いのため,風紀を乱すという非難もあったが,今日も世界中で行われており,ハロウィンもその流れを受け継いだものだと言う。

1990年代のアメリカ映画『マスク』では,冴えない男が変わった木製の緑色の仮面を拾い,自宅に帰りそれを顔につけた途端,猛烈な竜巻とともに超人的な力を持ったマスク怪人に変身してしまう。仮面の魔力で,本性を引き出され,数々の超能力と不死身な身体を持つようになる。英語のmaskは,「本性を隠す」と言う意味で動詞として使われることもあるが,実は「本性を現す」の反語であろう。

今日,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,マスクの着用は日常的光景になったが,マスクには,感染拡大防止とは別の力がありそうだ。目出しマスクであっても,人物が特定し難いことから,人の行動を大胆にさせることもあろう。

欧米では,外出するとき,マスクを着用していると重病感を持ってみられる。一方で,犯罪やテロなど,正体を明かさず悪をなすことにつながりやすいため,治安上の理由からマスクをとるように言われることがある。

6月5日WHOは,新型コロナウイルスをめぐるマスク着用の指針を変更した。医療用マスクについては一貫して,病人とその世話をする人のみが着用すべきだと助言してきたが,公共の場での着用を推奨すると発表した。マスクは感染力があるかもしれない飛沫を遮断できるとの新たな研究結果を踏まえたものだとしている。こうしたことから,一部の国では,公共の場でマスクをすることが推奨あるいは義務づけられるようになっている。WHOは,マスクは感染リスクを減らす道具のひとつにすぎず,マスクさえしていれば大丈夫だと安心はできないと強調,ソーシャルディスタンシングと手洗いが効果的だとしている。

厚労省も,屋内や乗り物など換気が不十分な混み合った場所では,高い効果があるが,屋外などでは,相当混み合っていない限り,マスクを着用することによる予防効果はあまり認められないと言う。

米国のトランプ大統領やブラジルのボルソナロ大統領は,マスクを着用しない。「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」自分にとって都合の悪い情報を無視したり,過小評価したりしてしまう正常性バイアスに陥っているとしか思えない。他者への感染防止の配慮を含めて自らの行動に責任を負うべきだろう。

こうした議論がある中で,シャツと友布のマスクや刺繍が入ったマスクなど,コロナ禍で人々は,個性的なマスクを着けることを競いあい,人々は思い思いに表現の自由で楽しむ向きもある。

とは言え,ポストコロナならぬポストモダンなファッションとして生活の中に根づくほどマスクが市民権を得たわけでもない。バッグや車の中に,1,2枚のマスクを置いている人は少なくない。マスク着用が,場面によっては,社交儀礼となっていることを感じはじめた人たちは,外出時のTPO用としてマスクを常備していると言うことだろう。マスクをとるタイミングを探りながら,日々の生活を送っているが,そのための決定的な根拠とタイミングが見つからないと言うのが実のところであろう。

国と東京都が自粛解禁の空気を作り,Go Toキャンペーンで全国どこへでも出かけられるようになった。これには異論が少なくない。何よりも,落ち込んだ旅行業界の振興策が,感染拡大キャンペーンになりかねないからだ。そのため,Go To Hellキャンペーン(地獄行きキャンペーン)と揶揄する人たちもいる。キャンペーンの指針の一つに旅行先や飲食開始までのマスク着用が定められているが,マスク頼みの無謀な政策としか言えない。観光振興,インバウンドの回復,東京五輪の開催といったロードマップが透けて見えてくる。

緊急事態宣言解除後のイベントの再開でもマスク着用が要請されている。同調圧力が強い日本では,マスクをしていないと感染拡大に協力的か否かの踏み絵にされかねない。こうした矛盾を抱え,感染の広がりや感染実態が分からないままに,人々はマスクを着用し続ける。当分,街角からマスク姿は消えないだろう。

感染防止に有効なマスク使用の基準も示さず,漫然とマスク着用を推奨するのは,マスク神話とも言える。これでは,かえってマスク着用が脱価値化され,してもしなくてもよいものになっていくアイロニーに陥りかねない。

2月27日の全国小中高等学校と特別支援学校の一斉休校要請からはじまった新型コロナウイルス感染拡大防止の国の政策は,当初から混乱している。ゴミや汚れが混入していて,物議を醸したアベノマスク。大切に取っておくと,将来いわくつきのレトロマスクとしての破格の骨董価値が出たかもしれないと,早々と処分してしまったことを嘆きたくもなる。


(グリーフワークかがわ 精神科医)
2020・6・30




◆グリーフワークかがわ第16回社員総会が開催されました◆


特定非営利活動法人グリーフワークかがわ定款第23条に基づき第16回社員総会を開催しましたので,下記の通り報告いたします。


日 時:2020年6月14日(日)13時30分~14時20分
場 所:高松市男女共同参画センター 第3学習研修室
高松市松島町1丁目15番1号 たかまつミライエ6階
出 席:出席者 正会員15名 監事1名 委任状出席23名

  1. 開会の辞
  2. 議長選出

    司会の上野美幸から,正会員総数60名中,出席者15名,委任状提出者23名の報告があり,定款第26条並びに第28条3に基づき,定足数を満たすことが確認され,第16回社員総会は有効に成立する旨が宣言された。議長は,立候補により瀬尾憲正が選出された。議長は,書記を上野美幸,議事録署名人を花岡正憲とローマ真由子に指名した。

  3. 議 事

    第1号議案 2019年度事業報告

     杉山洋子理事長より,総会資料に沿って2019年度の事業の実施状況について報告が行われた。

    第2号議案 2019年度収支決算報告

     村上美智子理事より,総会資料に沿って2019年度の収支決算について報告が行われた。

    第3号議案 監査報告

     生駒学監事より,2020年5月15日,杉山洋子理事長,瀬尾憲正副理事長,村上美智子理事立会いのもと,2019年度事業について,福岡啓治監事とともに,適正かつ正確に執行されていると認め監査を終了したと報告があった。

    瀬尾議長から,第1号議案から第3号議案について,一括質疑を求めたところ,以下の1点について質問事項があげられ,村上美智子理事より質問に対する回答が行われた後,採決が行われた。出席者正会員14名中(議長は除く),賛成13,反対0,棄権1,議長委任状は23名,よって本議案は承認された。

    質問1: 第2号議案2019年度収支決算報告について,テーマ募金の収支の詳細の記載はどうなっているのか。

    答弁1:平成30年度テーマ募金(31年度事業)共同募金助成事業について2019年度の合計361,000円の収入は受取助成金の一部となり,総事業費の内訳については15頁に科目別に記載している。詳細は,香川県共同募金会にも集計報告している。(村上美智子理事)

    第4号議案 2020年度事業計画案

     杉山理事長より,総会資料に沿って2020年度の事業計画の説明が行われた。

    第5号議案 2020年度収支予算案

     村上美智子理事より,総会資料に沿って2020年度収支予算案の説明が行なわれた。

    瀬尾議長から,第4号並びに第5号議案について,一括質疑が求められたが質疑はなく,採決が行われた。出席者正会員14名中(議長は除く),賛成13,反対0,棄権1,議長委任状は23名,よって本議案は承認された。

    第6号議案 その他

     会員提案なし

  4. 連絡事項

    杉山理事長よりグリーフカウンセラー資格更新に関して,メーリングリスト及び2020年度の資格更新についての連絡があった。

  5. 議長解任


◆2020年6月14日 第147回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2020年度グリーフカウンセラー・基礎コースに関する事項

予定通りの日程と人数で開催することで承認された。主担当理事は上野理事とし,第1回企画会議を6月25日(木)に男女共同参画センター第2学習室で開催する事となった。今後担当理事がメーリングにて会員へ周知していくことで承認された。

第2号議案

ひまわりミーティングの会場に関する事項

今後,開催場所が確保できない場合は相談室を利用することで了承された。

第3号議案

会議の形に関する事項

リモート形式での会議については将来的に導入出来るよう,機会があれば試験的に行い,本件については引き続き理事会で審議して行くことで了承された。

第4号議案

NPO法人取得10周年記念事業に関する事項

実行委員長から7月2日(木)の第11回実行委員会にて予算案及びシンポジスト等の詳細について審議する旨と今後のスケジュールについての提案があり了承された。

第5号議案

新型コロナウイルス感染拡大防止周知に関する事項

新型コロナウイルス感染拡大防止対策の推移を見守りながら,参加者・利用者が安心して来られるような環境を整えるよう,継続的に審議して行くことで了承された。

第6号議案

令和2年度香川県自殺対策強化事業交付要綱及び交付申請に関する事項

既に提出しているもので承認された。



◆2020年6月14日 第91回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
    5月の相談事業について現状報告があった。
  2. 技術援助について講師依頼の説明があった。
  3. 2020年度グリーフカウンセラー養成講座の企画について説明があった。
  4. 実務者研修についての説明があった。
  5. 勉強会 今回は休会。