2020年(令和2年)10月グリーフワークかがわ
ニュースレター第198号(HTML版)

2020年(令和2年)11月29日 グリーフワークかがわ広報部

「やってみた。初めてのファシリテーター役」


2020第2回ファシリテーター研修を下記日程で行いました。

10月26日(月)19:00〜21:00 高松市男女共同参画センター6F第二研修室

講師 池島邦夫

ファシリテーターと聞いて、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか?

グループミーティングなどでは、大切な方とお別れされた方が来られます。

ファシリテーターは来られた方が安心してお話の出来る場所を作り、円滑に進めて行きます。


GWKファシリテーター研修では前半は講義、休憩を挟んで後半はロールプレイをします。

前半ではグリーフケアの理論を講師池島さんの長年のご経験を交えて講義していただきました。これはGWKでの研修ならではのとても貴重な講義でした。


後半のロールプレイで、私は初めてファシリテーター役を経験しました。

1対1のカウンセリングと違い、ファシリテーションは全く別のスキルも必要と思いました。

お話をされている方たちはもちろんのこと、周りで聞いている方たちの反応にも気を配り、視野を広く持つことの大切さを学びました。

自分に何が出来て何が出来ていないのかが分かり(出来た事は圧倒的に少ないですが、笑)その場で池島さんや他の皆さんからフィードバックをいただけるので本当に勉強になりました。


コーディネーター 西山忠明




 リビングwithグリーフ 


弔意の要請

花岡 正憲


2019年11月に死去した中曽根元首相の内閣と自民党との合同葬儀が,10月17日,東京高輪のグランドプリンスホテルで行われた。これに先立ち,文部科学省は,13日付けで,全国の国立大学などに対して,弔旗を掲揚し葬儀中に10分間の黙とうをするよう弔意の表明を求める通知を出した。総務省も7日付で,都道府県知事や市区町村長宛てに「政府の措置と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力をお願いします」との文書を出している。

弔意とは,死を悼み,嘆き悲しむ気持ちのことである。弔意の表明は,人それぞれのグリーフワークという心の営みに関わることである。こうした弔意の表明に対する要請は,信教や祈りと言った内面の自由への政治介入であり,憲法違反に当たる深刻な問題と言えよう。

一人の人間としての政治家の死を悼むことを否定するわけではないが,生前貢献のあった政治家として弔意の表明を求められると反感を覚える人も少なくないであろう。故人の治世下で,不快な思いをしたり不利益を被ったりした人たちがいることは否定できない。さらに,イデオロギーや歴史観,国家観が絡んでくるので国や国民のために一様に貢献した人物と言うわけにいかない。

中曽根元首相の合同葬は,費用が総額1億9千万円余りに達することが判明している。内閣と自民党合同葬であるにもかかわらず,政府と自民党で半額を負担し,残りの9600万円は2020年度予算の予備費から支出する。これには,税金を原資とするのは問題だとの批判も出ている。

国民の弔意と政治の役割という観点からは,かつての元首の葬儀に国民の弔意を結集しようとすることは政治の役割でない。8月15日の終戦記念日,8月6日と9日の原爆の日,6月23日の沖縄慰霊の日は,追悼の場は,毎年異様な雰囲気に包まれ,怒号が飛び交う。とりわけ戦争は,多くの人の命を奪い,人々の関係にも大きな傷跡を残す。こうしたことからも,困難が伴うとは言え,人々が失われたものへの喪の作業が行える社会基盤を醸成すること,これが政治の役割であろう。

弔意の要請は,私たちの日常生活の中にも潜んでいる。訃報は,通夜,葬儀の日時と場所の情報とともにやってくる。情報提供者から「葬儀は出られますか?」と聞かれ,出席表明を迫られた思いになった人は少なくないであろう。故人とその家族への忠義の踏絵を迫られているような無言の圧力を覚えることもある。こうした事情から,通夜か葬儀のどちらかへ顔を出しておくとか,香典をことづけて代理出席を頼むとか,形だけ整えると言うことになることもある。

近年は,遺族の方が,儀礼的,外形的弔問を避けたいと言う思いから,近親者だけの葬儀が好まれる傾向にある。お金をかけた形だけの儀式の中に身を置くだけで,哀悼という心の営みが促されるわけではないことに人々は気付き始めているということだろう。

弔意は,祝意と同様,表現の自由を伴う極めて個人的な内面の自由に関わることである。


(グリーフワークかがわ 精神科医)
2020・11・13




◆2020年10月11日 第151回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2020年度上半期事業報告と会計報告に関する事項

杉山理事長により上半期の事業報告,事務局会計担当により会計報告が行われ,運営状況を確認した。会計については,前期分の県の補助金と香川県共同募金会テーマ募金の受取助成金並びに一般寄付金について報告があった。本年度は新型コロナウイルス対策の物品の購入,ホットライン専用電話の買い替え等があるが,上半期4月~9月はおおむね例年通りの収支となっている。下半期については,普及啓発事業として公開セミナーを2回実施予定としている。

第2号議案

2020年度認定カウンセラー認定委員会に関する事項

9月26日開催の第1回認定委員会の報告と委員会から提案のあった事項について検討し,以下の項目が承認された。(1)認定委員1名の補充について:2020年度資格認定委員1名の辞退の申し出があり,補充の可否について検討するよう委員会より要望があり,理事会として夛田氏を選出した。(2)資格認定規則の改訂について:「特定非営利活動法人グリーフワークかがわヘルプラインカウンセラー資格認定規則」及び「特定非営利活動法人グリーフワークかがわグリーフカウンセラー資格認定規則」(ともに平成30年11月11日改訂)において,資格更新された者は資格登録も継続とする旨の内容の加筆が行われることで了承された。(3)認定委員会運営マニュアルについて:資格認定委員会の年間の活動内容について,公平に認定作業および更新作業が行えるよう,運営マニュアルを制定する必要性について提案があり,承認された。理事会にて素案を作成する。

第3号議案

2020年度公開セミナーに関する事項

2020年度はテーマ募金事業の一環として公開セミナーを2回の開催予定で予算化しており,下半期に「コロナ禍での喪失」をテーマに理事を中心としてグリーフワークかがわ会員から講師を選出し開催予定とすることで承認された。

第4号議案

NPO法人取得10周年記念事業に関する事項

テーマ募金事業の一環として予算化している本事業について,主担当理事の負傷により企画会議が延期になっていたが,第11回実行委員会について,11月12日に開催予定として実行委員会の活動を再開させることで承認された。記念誌の作成及び記念シンポジウムの開催時期が来年度以降となる可能性も含めて実行委員会で検討する。

第5号議案

理事研修に関する事項

理事研修については,可能な限り多数の理事が出席できる日時調整が望ましいと考え,今後日程調整を行う。テーマとしては,これまでの理事会で提案されている「認定NPO法人とは」「ボランティア役務費について」「認定NPO法人運営について」「公開セミナー等普及啓発事業に使用する資料について」の中から設定して開催予定とする。

第6号議案

2020年度テーマ募金に関する事項

テーマ募金の内容については昨年度と同様の内容で,チラシについては原案通りで印刷会社との連絡をとることと,テーマ募金参加団体連絡会(11月16日)にローマ理事が出席することで了承された。

第7号議案

愛媛県臨床心理士研修会への講師派遣に関する事項

愛媛県臨床心理士会からのワークショップの講師派遣依頼について,先方が再審議のため,あらためて連絡を待つこととなった。

第8号議案

2021年度香川県地域自殺対策強化事業に関する事項

10月9日付香川県障害福祉課からの照会に対し,今年度の申請額と同額で回答することで了承された。

第9号議案

高松市自殺対策推進会議の意見聴取に関する事項

高松市自殺対策推進会議の書面会議案内と意見聴取について,自殺対策事業については現在行っている事業を記載すること,高松市に対する意見については,高松市としての自殺対策の取組みの姿勢について当法人からの意見をまとめ,委員である夛田理事が文案を作成し,理事メール上で検討の上,完成版を提出することで了承された。

第10号議案

ブロシュール印刷・発送に関する事項

ブロシュールの印刷の発注と発送の準備のため,次回の理事会までに発送先を確認することで了承された。



◆2020年10月18日 第95回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
    9月の相談事業について報告と,利用者の声から事業実施側としての新たな認識を得たことについて報告があった。
  2. 技術援助事業の報告
    グリーフカウンセラーとして香川県社会福祉協議会主催「傾聴ボランティア養成講座」の講師派遣について報告があった。
  3. 課題
    相談事業の課題として,事業報告のあり方について話し合われた。
  4. 勉強会

    文献「ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化」
    島薗進著 朝日新聞出版 朝日選書982

    第7章 戦争による悲嘆を分かち合う困難

    <解説と意見交換の要約>

    大きな喪失を伴う戦争による悲嘆の共同性に何が問われているか。社会全体で悲嘆を分かち合う困難は,先の大戦とその戦後処理を巡る日本の特異性が背景にある。8月15日の終戦記念日には,毎年靖国神社周辺で右翼と左翼の怒号が飛び交い,国会議員の靖国参拝には毎回アジア近隣諸国の反発がある。沖縄慰霊の日(6月23日)の安倍首相のスピーチに対しては「何しにきたんだ」「嘘言うな」「帰れ」コールが巻き起こる。アジア・太平洋戦争における日本の戦没学生を中心とした「きけわだつみのこえ」には,皇国史観による栄誉の死いわゆる殉国者の声と反戦死の声がありイデオロギー的対立がある。

    東京裁判は,戦勝国が敗戦国を裁く裁判で終わっている。近隣諸国だけでなく国民に対する戦争責任を明確にするために,国民自身が戦争犯罪者を裁くと言う戦後処理が終わっていない。国民が悲嘆を分かち合う環境が整っていない。日中戦争やアジア・太平洋戦争の死者たちのへの追悼を悲嘆の共同性と言う観点から振り返ると,大きな困難が横たわっている。

    孤独な悲嘆に苦しむことを当然と考えて良いような社会環境が広まっている中で,そもそも悲嘆の共同性をよびさまそうとしても無理があるのだろう。それだけに,お互いの悲嘆が胸に閉じ込められてしまう孤独を避けられないこととして悲嘆に向き合うことが求められていうことなのか。