2020年(令和2年)11月グリーフワークかがわ
ニュースレター第199号(HTML版)
2020年(令和2年)12月15日 グリーフワークかがわ広報部
2020年度 グリーフカウンセラー養成講座 基礎コース 終了報告
「2020年度グリーフカウンセラー養成講座を終えて」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー講師 池島邦夫
今年の養成講座を終えて、ほっとしているとともに、振り返って、もっと、受講者の皆さんに「グリーフ」についてお伝えしたかったなあと考えています。講師として復帰して3年目の今年は、第4回「みとりと喪失」と第6回「グリーフカウンセリングの終結」を担当させていただきました。
講義内容については、第4回は、それまでの講座を受け、連続性を重視した形にし、喪失の本質的な意味を再度、理解していただくためのものとしました。このため、理論的な内容を追加するとともに、事例も変え、個人の「喪失」とそこからの回復といった箇所に焦点を絞ったロールプレイを行いました。また、第6回は、グリーフカウンセリングの終結ということで、そのための課題の消化(グリーフワーク)に関する理論的な説明と6か月後のカウセリングを題材としたロールプレイを行いました。6回のテーマであるグリーフカウンセリングは一応終結するかもしれないけど、グリーフワークは、ずっと、その人の人生に影響を与えるものであり、大切な人を亡くした悲哀の感情は、乗り越えるものではなく、生きていく中であるものだということが、カウンセラーとしてどう理解していくかが課題であるといえます。
今回の講座を振り返って、まだまだ、自分自身の力不足や、知識や実践が足りない面などを改めて再認識するとともに、グリーフワークの奥深さを感じました。この経験は、今後の活動にも生かしていければと思っています。
また、今回は、コロナ対策のため、講師の人数を6名に制限したことにより、講師間の一体感が醸成されるとともに、講座の連続性が保つことができ、受講者に対し、十分に質の高い講座が提供できたのではないかと思っています。
さらに、今回の受講者の中には、遠く、県外からの参加や2年越しの参加希望の方、視覚障害のある方の参加など幅広い参加をいただき、改めて、この講座の必要性や希少性を認識するとともに、これからも、より質の高い講座を行っていくことがこのグリーフワークかがわに求められていることだと痛感したところでもあります。
講師の皆さん、参加者の皆さん、また、グリーフワークかがわのスタッフの皆さんに感謝を申し上げ、今年の講座を振り返っての報告といたします。
「2020年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コース開催報告」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー講師 上野美幸
- 感染対策グッズ
長い夏が終わり涼しい風が吹き始めた2020年9月24日、サンポートホール高松において、2020年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースが開講いたしました。以降10月29日までの間に全6回の日程で開催され、県内外から11名が受講いただき、講師・アシスタント講師とともに演習やグループディスカッションに取り組みました。今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大時期が準備時期と重なったこともあり、感染対策のための会場の変更や物品の準備、申し込み時の注意事項の作成など、急遽対策しなければならない事項が多くありました。準備を整える中で、主担当理事としては戸惑い、悩むことも多くありましたが、企画会議においては、講師・アシスタント講師に加え、講師以外の理事や認定カウンセラーの皆様にも多大なご指導ご協力をいただき、無事養成講座を終えることができました。本当にありがとうござました。
- 受付の様子
講師会では講座の内容や全体の流れについて、講師全体で協議を重ねることで、連続性を持った内容と、より発展した講座になったと感じております。個人的には、今回ローマさんとともに第1回の「喪失体験 悲哀と悲嘆」を担当することになり、重要な導入部分の講師として緊張感をもって臨むことができ、大変貴重な経験となりました。
- マスク・フェイスシールド マイク使用した講師の様子(第4回池島講師)
日本中が新しい生活様式への変更を迫られ、これまでの生活が失われるという大きな喪失の真っただ中にある今、グリーフワークかがわが果たせる役割は大きいと感じております。
受講生におかれましては、このような状況の中でも多くご出席いただき、全員が修了となりました。グリーフについてもたくさんのご意見ご感想をいただいたことに大変感謝しております。講師として、理事としても多くのことを学ばせていただいた本年度の講座でした。ありがとうございました。
「2020年度 グリーフカウンセラー養成講座に参加して」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー アシスタント講師 青井恵子
参加者の皆様、講師及びアシスタントの皆様、お疲れ様でした。
皆様が一生懸命なさったことに対して、心から感謝しています。また、開講準備をしていただいた方々へコロナ対策を含め、開講までの様々なご苦労に対してこの場を借りて深くお礼申し上げます。
今回の講座について、一言で感想を述べると、参加者の方々の柔らかい人柄に加えて、ロールプレイにおける面接能力や発表時のまとめる力の高さに感服しました。
開講されるまでは、コロナのことがあり、参加者が少数のため開講できないのではないか、 遠路来ていただいて満足していただけるのだろうか、と心配しました。遠くから来ていただいた方から終了日に「参加して良かった」という声をお聞きした時は、本当にほっとしました。
今回は今までになく、多様な参加者であったことが、温かい輪をみんなで一緒に作り上げられたことにつながったかもしれません。困難を乗りこえていくこと、やればできることを学んだ今回の養成講座でした。
養成講座を受講された皆様方とともに活動できる日を心待ちにしています。
「勤労感謝の日のカウンセリング研修」
2020年11月23日(月・祝)10:00よりミライエで行われたカウンセリング研修は、養成講座で学んだロールプレイとは一味違いました。
講師の青井恵子さんと共に、クライアント”役”の参加者が「最近あった小さな出来事(悩み)」を、カウンセラー”役”の参加者に相談するものでした。いわゆる擬似カウンセリングですね。
私はクライアント”役”として、「値下げされていたお茶を喜んで大量に買ったけれども玄関先で落としてしまい途方に暮れてしまった事(笑)」をカウンセラー”役”の方に話しました。時間が短くあっという間でしたが、自分では思いつかないような角度からのカウンセリングを体験し、とても勉強になりました。
また、実際のカウンセリングと違い、その場でクライアント”役”の方からフィードバックを頂けるのもより実践的で、とても勉強になりました。
そして、何より各人が実際にあったことを語ることで、お互いを理解する良いきっかけにもなりました。認定カウンセラーの皆さんもご都合が合えばぜひぜひご参加くださいね。
コーディネーター 西山忠明
リビングwithグリーフ
コロナ危機と日常性
花岡 正憲
2020 年 3 月 18 日 WHOは,あらゆる年齢階層と社会階層に向けて,「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)と心の健康」と言うメッセージを発信している。
日々の日課を維持すること,状況の変化があっても新しい日課を作成し試してみること,そのためには国民一人ひとりが自分の健康情報をもって合理的な行動を行うことが,心の健康に大切だと言う。
WHOは, 日常性の確保のために,WHOのホームページや地元自治体の基本情報から定期的に正しい情報を収集することを推奨している。事実と噂を識別し,恐怖を最小限にすべきだと言う。
11月30日参院本会議で,菅首相は,「Go To キャンペーンが感染拡大の主要な原因とのエビデンス(科学的根拠)は現在のところ存在しない」と答えた。分科会の尾身会長も,旅行が必ずしも感染を拡大するわけではないと語っている。一方で,感染拡大とGo toトラベルは関係がないと言い切れるだけのエビデンスもない。
その後,東大などの研究チームがGo Toトラベルの利用者の方が,利用しなかった人よりも多く新型コロナウイルス感染を疑わせる症状を経験したとの調査結果を公表している。PCR検査による確定診断ではないが,嗅覚・味覚の異常などを訴えた人の割合は統計学上2倍もの差があり,利用者ほど感染リスクが高いと結論付けている。
COVID-19の第3波の危機感が広がる中で,菅首相は,Go Toキャンペーン自体の中止や停止については明言を避けてきた。Go Toキャンペーンが必要なのは,雇止めで自殺者が増えているからと言う。雇止めされた人には,Go Toキャンペーンによる雇用の創出ではなく,別の経済的支援が必要であろう。
重症化しやすい65歳を超える高齢者や合併症を起こしやすい基礎疾患がある人の利用の自粛を呼びかけたいとの東京都の小池知事の要請に対しては,菅氏は,これは理解できると応じたことが明らかになっている。そもそもGo Toキャンペーンは,感染重症化ハイリスクの者には参加の自粛を呼びかけざるを得ない危険を伴うイベントであるということを認めていると言うことだ。
根拠のない楽観論を広げておいて,「やはり危ないかも」と慎重論を小出しにしていくやり方は,行政行為における未必の故意に他ならない。Go Toキャンペーンは,もっぱら旅行業者や飲食業者に対する経済支援策を狙いとしているが,感染が拡大する中で続けて行くと,かえって業者が疲弊して行きかねない。
WHOは,心の健康に欠かせない要素として,定期的運動,規則的睡眠,健康的食事をあげている。普段の生活の中で慣れ親しんだ日課を可能な限り維持すること,ストレス下においても自分のニーズや気持ちに注意を向けること,そして楽しめてリラックスできる健康的な活動に従事することが大切だと言う。
わが国は,諸外国と比べて,PCR検査の件数は圧倒的に少なく,希望する者に検査を受けさせることには消極的である。国民一人ひとりが日常性の確保を自らの意思によって行えるように正確な情報を提供することは,政治の大切な役割であろう。
感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る上で,遠出や会食は必須ではなかろう。Go Toキャンペーンと言ったアッパーミドルの非日常的興奮を刺激するようなに政策にこだわり,本来の豊かさについての想像力が乏しい政治に付き合わされることで国民が失うものは少なくない。頓挫した構想とは言え,3月30日には,自民党農林部会や水産部会が「お肉券」や「お魚券」などの商品券の発行をコロナの感染拡大に対する経済対策に盛り込もうとしたことは記憶に新しい。
反知性主義とポピュリズムで危機を乗り越え日常性を取り戻すことはできない。人々が日々の生活の中に豊かさを見つけ,心地よい時間を根づかせていくために,政治のあり方が問われている。
(グリーフワークかがわ 精神科医)
2020・11・30
報告
◆2020年11月8日 第152回理事会◆
《審議事項》
第1号議案
2020年度公開セミナーに関する事項
新型コロナ禍と喪失をテーマとすることで情報収集を行ったが,さらなる審議が必要であり,継続審議とすることで了承された。
第2号議案
認定カウンセラー認定委員会運営マニュアルの策定に関する事項
継続審議とする。
第3号議案
愛媛県臨床心理士会からの講師派遣依頼に関する事項
技術援助担当花岡理事から依頼内容の報告があり,当法人としては当事者性を重要視した講師派遣を行うことの意義が確認され,ローマ理事から講師依頼受諾の意志表示があり,内容は昨年度高松市保健センターへの技術援助として準備をしていたインタビュー形式で行うことで了承された。
第4号議案
2020年度テーマ募金に関する事項
主担当ローマ理事から,準備状況と今後のスケジュールについて説明があった。11月16日に参加団体連絡会にローマ理事が出席する。
第5号議案
理事研修に関する事項
11月6日に理事長と村上理事が香川県男女参画・県民活動課に赴き,理事研修の講師,内容等について相談を行い,塚本公認会計士を講師とし,認定NPO法人の管理運営について,今年度内に理事研修を行うこと,理事は必ず出席することで了承された。
第6号議案
ブロシュール印刷と発送に関する事項
GWKのブロシュールは冊子について修正すること,グループミーティングについては赤い羽根共同募金のロゴマークを挿入すること,昨年度と同数の部数の発注を行うことで,AIYAシステムに印刷と発送の依頼を行うことで了承された。
第7号議案
事業実績の記録に関する事項
記録様式案が理事長から示されたが,実務者研修に限定せず事業報告が行える様式案を作成することとし,継続審議となった。
第8号議案
実務者研修の実施に関する事項
理事長から示された2020年度実施要領について,講師料を修正して実施することで了承された。
第9号議案
社員アンケート調査に関する事項
アンケートの内容について,事業参加に関する事柄か,グリーフワークの認識について深く踏み込んだ内容にすべきか,さらに議論が必要であることから継続審議となった。
◆2020年11月12日 第153回理事会◆
《審議事項》
第1号議案
副理事長の交代に関する事項
瀬尾副理事長から副理事長職退任の申し出があり,その経緯が杉山理事長より報告された。理事職は継続される。副理事長として定款第13条第4項に従い,互選によりローマ真由子理事が選出された。
第2号議案
2020年度公開セミナーに関する事項
公開セミナーについて,コロナ禍における様々な喪失がテーマとして候補に挙げられ,内容を絞り込むことを目的として,11月29日(日)15:30GWK相談室にて理事による勉強会を開催することとなった。公開セミナーの開催は2021年1月31日,2月21日いずれも14:00-15:30とし,会場は高松市男女共同参画センターを予定する。
第3号議案
社員アンケート調査に関する事項
2020年度の調査研究事業として事業計画に挙げられているアンケート調査について,「コロナ禍での喪失について」と「GWKの事業について興味のある事業および参加したい事業について」の調査を行うことで理事長が案を作成する。
第4号議案
事業実績の記録に関する事項
理事研修で公認会計士の助言を得たうえで作成すること,それまでは現在の様式で継続することで了承された。
第5号議案
愛媛県臨床心理士会からの講師派遣依頼に関する事項
技術援助担当花岡理事より依頼元との連絡調整の結果の報告があり,今後の対応について確認した。当法人としては当事者性を重要視した依頼内容に賛同し,技術援助として十分な準備をもとに講師派遣を行う。
◆2020年11月22日 第96回認定カウンセラー会議◆
- 各相談事業の報告
10月の相談事業について報告があった。 - グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースの報告
今年度は県外からの参加もあり11名の受講者で終了したことの報告があった。 -
勉強会
文献「ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化」
島薗進著 朝日新聞出版 朝日選書982第8章 悲嘆を分かち合う形の変容(担当:夛田敏恭)
江戸時代初期に全国に定着した檀家制度は,政治を背景とした葬式仏教の確立であった。しかし,近年では言え制度自体が弱体化し,宗教心の薄まってきたことにより葬式仏教も崩壊し始めている。心の拠り所であった宗教だったが,宗教心が薄まった現代には新たな拠り所が必要とされる。喪の作業を行うことに孤独を感じる今の時代には,グリーフワークやケアを担う仕組みが必要になっている。