2020年(令和2年)12月グリーフワークかがわ
ニュースレター第200号(HTML版)
2021年(令和3年)1月15日 グリーフワークかがわ広報部
2020年度 グリーフカウンセラー養成講座 基礎コース 終了報告
「2020年度グリーフカウンセラー養成講座を終えて」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー講師 夛田敏恭
今年も講師1回とアシスタント5回の参加ができました。毎回、新たな知識や気づきがあり、自身の学びの場になっていることに感謝しています。
今年、私自身が二度にわたる骨折を経験し、身体的不自由を経験しました。健康を喪失すること、コロナ禍によって入院中の隔離感、元に戻らないもどかしさ。今年の養成講座には、いつもと違う気持ちで参加しました。
今年もこの養成講座では、ロールプレーを中心としたカリキュラムでおこないます。ロールプレーになれていない受講者は、最初は戸惑いますが回を重ねるごとに役割を理解するのにも慣れてきました。私が今回のロールプレーで気づいたのは、私自身が誘導のような語り口になっていたことでした。カウンセラー役に行き詰まったときに、つい出てしまった言葉を思い返して落胆してしまいました。その後の受講生のカウンセラー役に学ばせてもらい、自身の未熟さを思い知りました。回を重ねても、学ぶことはいろいろ有るのだと再確認ができた講座でした。
「2020年度グリーフカウンセラー養成講座を終えて」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー講師 ローマ真由子
昨年に引き続き本年度も講師を担当させていただきました。今年は昨年と同じ「家族の死」に加えて,主担当理事の上野さんと第1回の「喪失体験 悲哀と悲嘆」も担当させていただきました。
また,昨年に引き続き事務局も担当しましたが,今年は新型コロナウイルスの影響で開催をするかどうかという点から何度も悩まされたのが印象的でした。県外からの参加希望者をどうするのか,最小催行人数を設定すべきか,募集人数はどうするのか,そもそも開催するのかどうかなど,私たちも新型コロナウイルスという見えない不安に振り回されていたようでした。今思えば,開催について右往左往していた当時の私たちは,当たり前の「日常」を急に失ってしまったことによる「パニック状態」であり,「不安状態」であったのだと思います。最終的には感染予防対策を講じた上での開催の運びとなり,受講希望者をお断りする事なく最終回まで終える事が出来ましたが,もしあの時に「見えない不安,恐怖」の為に開催を断念していたら今頃はとても後味の悪い思いをしていたのではと思います。
喪失を経験した後にはパニックや不安,恐怖,怒りなど様々な感情が押し寄せてきますが,我々グリーフカウンセラーはクライエントに対して,そのような反応が決して間違ったことではなく,当たり前の反応であるという事を伝えなければいけません。そしてクライエントはそのような自分の状態が当たり前なのだと知る事で,喪失を受け入れる事が出来,次の一歩を自ら踏み出す事が出来ます。不安状態にあった私たちは危うく間違った選択をしてしまうところでしたが,正しい情報の元,探り探りではありましたが感染防止対策を取ったうえで開催する事が出来たのは,私たち自身が「日常の喪失の不安」と向き合う事が出来たからだと今は感じます。生みの苦しみがあった分,全体的に今年は例年以上に講師・アシスタント講師が一丸となって講座を支える事が出来た気がします。また今年の経験は今後に必ず生きてくるものと強く感じます。
自分自身については,やはり頭で考えていることを口に出して人に伝えるのは大変難しいという事を痛感した担当回でした。頭や気持ちの上では十分に理解しているつもりでも,いざそれを正しく伝えようと思うと上手く出来ず,勉強と経験不足を痛感しましたが,出来るだけ自分の言葉で伝える事が出来たのは少なくとも今年の成果だと思っています。来年もまた講師の機会が頂ければ,今年の反省点を活かせるよう経験を積んでいこうと思います。
最後になりましたが,ご指導ご協力頂きました講師・アシスタント講師の皆様,理事の皆様有難うございました。
「2020年度グリーフカウンセラー養成講座参加レポート」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー アシスタント講師 田辺 出
2020年度、グリーフカウンセラー養成講座にアシスタント講師として参加させていただきました。そのレポートとして本稿を提出させていただきます。
昨年度に私自身が本講座を受講し、講師側のスタッフとして参加するのは初めてでした。講座内容を検討する段階から、新型コロナウイルスに対する対策の面で考えねばならないことが多く、その対策については各回講座を運営する最中においても、毎回工夫と反省を迫られるものとなりました。
そうした状況にあって表面上は慌ただしい様子を見せつつも、講座全体としては首尾一貫したものが提供されたように思います。それができた理由というのも、講座内容の骨格部分が、これまで年々の開講経験を通してしっかりと練り上げられたものであったからだろう、という印象を受け、歴史を感じるところでありました。
さて、今年度受講生の皆様につきましては、どうやらお聞きする限り、例年に比べ各方面の専門職の方が多く集まっておられたようです。実習などで個々の受講者の方と個別に関わる際にも「この方はグリーフケアの知識を何に用いていくのだろうか、何を求めてグリーフワークを学びに来ておられるのだろうか」と、お一人お一人に向き合いながら考えさせられることとなりました。
皆様の専門領域の中で、学んだ内容が様々な実体を得て花開いていく様子を思い描きながら、これまで想像しなかったグリーフワークの潜在的な可能性や発展性について洞察が得られ、個人的にも大変有意義な経験をさせていただきました。
今後もし受講生の皆様が認定カウンセラーとなられた際には、後々の皆様のご活動状況や、専門領域での具体的な対応事例の紹介など、後追いのお話しなども聞ければ更に有意義だろう、と今から楽しみにしているところです。
次回に向けての反省点があるとすれば、講座の前半の段階でロールプレイに対する受講生の戸惑いが大きく伺えたことでしょうか。「こんなにロールプレイの実習があると思わなかった」と率直に言われた方も居られました。
カウンセリングとは何か、なぜロールプレイの経験が必要なのか、心理支援の基本的な心構えとは・・・といったようなことが、十分に伝わり受講者の“心の準備”ができた段階で実習などが始まる設計になっていると、受講生側も迷いなくより効率的な学習ができるのでは、と感じました。
ともあれ一連の講座が終了し、受講生の方々のやり切ったお顔や満足の声をお聞きかせいただいて、私自身もしっかりとグリーフケア推進の一旦を担えたのだという手応えを感じることが出来ました。この度は、貴重な経験に与らせていただき、誠に有り難うございました。
「グリーフカウンセラー養成講座アシスタント講師を終えて」
グリーフワークかがわ認定カウンセラー アシスタント講師 童銅啓純
「自殺予防」の講座で配られた資料に以下の短い文があった。
■私が聞いてくださいと言うと、あなたはアドバイスを始めます。あなたは私のお願いを聞いていません。
■私が聞いてくださいとお願いすると、あなたは「そんな風に感じてはだめよ」と言い始めます。あなたは私の気持ちを踏みにじっています。
■私が聞いてくださいとお願いすると、あなたは私の問題を解決するために「何かをしなくては」と思います。奇妙に思えるかも知れませんが、あなたは私を失望させたのです。
一部を引用
グリーフカウンセラーとして肝要であり不可欠な「傾聴」の教示である。
そして、人の話を聞くことの奥深い難しさは受講生を大いに悩ましていた。
家族や知己の死、離別、社会的喪失、災害、人災、・・・。私の病気、私の老い、私の死・・・。これらグリーフ(悲嘆・喪失)は尺度が違えど万民平等に訪れる。万民が被る四苦八苦は時には医療、福祉のおかげで改善に向かい、あるいは歳月とコミュニティ、有情の中で和らぎ、亦一つ暮しが進めればよいが簡単とは行かなく混乱して無明となるのも一方なのかもしれない。
なぜ?人間万事塞翁が馬ではないが苦悩を「人間たらしめる」体験と結果的にも味わえず、躓き絡み無明となり傷つけ傷つくのだろうか。
「傾聴」とは、ありのままに聴く事と教わる。
この「ありのまま」、「ありのまま」となれない「ありのまま」。
受講生と共に「傾聴」の奥深さをつくづく味わった6回のグリーフワーク養成講座でした。
「電話相談員研修とクリスマスプレゼント」
GWK認定カウンセラーの皆様、明けましておめでとうございます。
2021年もよろしくお願いします。
2020第3回電話相談員研修を下記日程で行いました。
12月18日(金)19:00〜21:00 高松市男女共同参画センター6F第二研修室
講師 夛田敏恭
年末という時期のせいか参加者は4名でしたが、講師の夛田さんが臨機応変に内容を少し変更してロールプレイをじっくり行いました。
私のロールプレイのお相手は土曜ホットライン、ヘルプライン、グループミーティング等でご活躍されている村上美智子さんでした。
そして最後の振り返り(雑談?)の時に土曜ホットラインで私の対応で心の奥にひっかかっていた事を話しました。
夛田さんは否定も肯定もせず僕ならこうするかな?と対応を見せていただきました。
その瞬間に長年心の隅に引っかかっていた物がスーっ消えて「あーそうか!」と思いました。
この日の実務者研修を僕は一生忘れないと思います。一足早いクリスマスプレゼントを貰った気持ちになり、ニコニコ顔で帰りました。
次回の電話相談員研修は3月19日(金)19時から男女共同参画センターで行います。
今年度最後の実務者研修を奮ってご参加くださいね。
コーディネーター 西山忠明
リビングwithグリーフ
リスク社会を生きる~ポストコロナの時代~
花岡 正憲
日本人は,普段通りの日常を「ケ」の日,祭礼や年中行事などを行う日を「ハレ」の日と呼び,日常と非日常を使い分けてきた。「ハレ」の日は,晴れ着を着たり,餅や赤飯を食べたり,酒を飲んで祝ったり,特別な日とされた。「ケ」の日々を送る中でエネルギーを消耗するから,「ハレ」はお祓いとしての祭りごとの意味もあった。
近年,日本人は,非日常的な興奮の中に身を置きたがるようになった。晩酌よりも酒宴,家庭料理よりもグルメツアー,地産地消よりも返礼品目当てとなったふるさと納税制度もそうだ。日常性がイベント化されやすくなっている。「ハレ」と「ケ」の区別が曖昧になっているとも言えよう。人々の脳に刻まれたこうした興奮は,容易に鎮静化しそうにない。
コロナ禍のGO Toキャンペーンで,域外からはるばるやってきて,長蛇の列に並び讃岐うどんを食べる。人々のこうした興奮は,昼休みに職場の近くの行きつけのうどん屋で列に並ぶ日常とは質的に異なるものだ。Go To イート,Go To トラベルで,「ハレ」を演出する政策に,国民が乗せられ,外食・旅行・観光業などが弄ばれる。感染拡大リスクが高まることが明らかである。余分な支出や時間や場所の移動を伴わず日常性を取もどすことが問われる中で,政治の想像力の貧困は絶望的と言えよう。
イート・アウト(外食)やトラベルを繰り返しているうちにウイルスは自然に消えて行くとでも思っているのだろうか。非日常的「ハレ」の営みでウイルスに打ち勝つと考えているのなら,まるで病をお祓いで追い払う発想だ。現実に目を背け,精神論で困難を克服できると信じて疑わない。先の太平洋戦争へ突き進んだ姿とも重なる。
今日,ネオリベラリズム(新自由主義)の落とし穴があることに,多くの人は気がついていない。政府による個人や市場への介入は最低限とすべきとして,1980年代から始まった政治主導の「民活プロジェクト」は,規制緩和とセットで民間企業の活力を引き出し,財政負担なしに社会整備を図っていく方向が明確に示された。新自由主義的政策は,職業選択の自由,開業の自由に引き継がれ,非正規と言う不安定な雇用形態や経営基盤が弱い業種を増やして行った。
政治の役割は,社会経済的に脆弱な階層への支援とそうした階層を作らないことだろう。小さな政府のもとで自己責任を求められる。1998年を境に国民生活から安心と安全を奪い,自殺者を増やしてきた政権が,差し迫った危機にある国民や業種に手を差し伸べることはあり得ない。
フランスの経済学者で思想家のジャック・アタリは,ヨーロッパを代表する知性として21世紀に向けた提言を行ってきた。その著書『危機とサバイバル-21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(林 昌宏 訳 作品社 2014)の中で,今後10年で,破壊的なパンデミックが発生する恐れがあると,既に予測している。そして,こうした脅威にはサバイバル戦略があるとする。「天災・疫病・大量虐殺・経済危機に直面すると,多くの者(人・企業・国家)は明晰さを失う」とし,運命に対して無力な傍観者がとる態度の一つに自己放棄があると言う。
危機に際しては,誰かが何かをしてくれると他人任せではいけない。特に日本人は長期的な脅威を見抜く能力としての「緊張感」という時間に対する感覚を充分自覚してないと,アタリは言う。
リスクを回避しようとして場当り的に行われた2020年2月からの一斉休校は,子ども・若者から居場所と言う日常性を奪い,二次的な社会経済的リスクをもたらした。公助よりも自助と共助を唱える政権は,余計なことをして自助と共助の足場まで壊してしまう。
COVID-19を1918年から1920年にかけて流行したスペイン風邪の記憶と重ねて,100年に一回あるかないかと評する専門家や評論家がいる。スペイン風邪を歴史上の残滓としか見ない彼らは,いずれ嵐は収まり,安楽な生活が戻ってくると言っているに過ぎない。ポストコロナは,次のリスク社会,プレコロナの時代を生きるということだ。
密を避けソーシャルディスタンスを取る。家が全焼してから消防車を出動させる。コロナ禍で問われているのは,こうした政策科学を持たない政治とのディスタンスを取ることだろう。
(グリーフワークかがわ 精神科医)
2020・12・31
◆2021年テーマ募金へのご協力のお願い◆
赤い羽根共同募金:大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト募金チラシ PDF
https://hanett.akaihane.or.jp/donate/entry/517/
~ コロナ禍における心の健康に関する特集プログラム ~
◆グリーフワークかがわ公開セミナーのご案内◆
第1回・2回公開セミナーチラシ PDF
第1回:2021年1月31日(日)14:00~15:30
テーマ:コロナ禍における様々な喪失
講 師:島津 昌代(認定NPO法人マインドファースト理事長)
杉山 洋子(認定NPO法人グリーフワークかがわ理事長)
第2回:2021年2月21日(日)14:00~15:30
テーマ:子どもと喪失 -絵本を使って-
講 師:上野 美幸(認定グリーフカウンセラー)
ローマ 真由子(認定グリーフカウンセラー)
会 場:高松市男女共同参画センター第3学習室
どなたでも参加できます・事前予約不要 参加費500円
※この事業は赤い羽根共同募金の助成金を受けています
報告
◆2020年12月13日 第154回理事会◆
《審議事項》
第1号議案
会計手続きに関する事項
事務局会計担当より本年度の会員の会費の納入状況が報告と,銀行の手続き方法について提案があり情報収集をしていくことになった。
第2号議案
2020年度テーマ募金に関する事項
現在の準備状況についてローマ理事より報告が行なわれ,発送準備,発送先についての確認を行った。
第3号議案
2020年度公開セミナーに関する事項
本年度2回開催予定で準備を進めている公開セミナーについて,ローマ理事よりチラシ案が示され検討された。2021年1月31日,2月21日いずれも14:00-15:30開催予定でチラシの発注を行う。講師会について理事長が調整を行うことで了承された。
第4号議案
認定カウンセラー認定委員会運営マニュアルの策定に関する事項
厳正な認定作業を行うため,花岡理事より書面表決添付資料にて骨子案が提案され,今継続審議とすることで了承された。
第5号議案
社員アンケート調査に関する事項
2020年度の調査研究事業として事業計画に挙げられているアンケート調査について理事長から素案が提示され,内容について審議を行い次回の理事会で回答方法も含めて検討する。
第6号議案
高松市自殺対策推進会議書面会議に関する事項
夛田理事のより質疑内容についての回答が作成されており,回答案を理事にメールで周知のうえ提出予定として承認された。
◆2020年12月20日 第97回認定カウンセラー会議◆
- 各相談事業の報告
11月の相談事業について報告があった。 - 1月以降の事業計画について
テーマ募金,公開セミナー,認定カウンセラー更新について説明があった。 - カウンセリングの現場での状況報告と課題について
グループミーティングでのファシリテーターの役割について議論を行った。 -
勉強会
文献「ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化」
島薗進著 朝日新聞出版 朝日選書982第3章 グリーフケアが知られるようになるまで(担当:杉山洋子)
フロイトが「喪の仕事」と呼んだ心の作業は心的エネルギーの向きを変えていく過程である。「自分が多くを分かち合い,愛着だけでなく恨み・憎しみを含めて多くの心的エネルギーを投じてきた相手と自分自身の関係を捉え直し,心的エネルギーをいわば内に収めていく」(p75)ことであるために葛藤を抱えることが喪の作業の一つの課題となる。この章では,対象喪失に伴う悲嘆の過程について,ライフサイクル,宗教,社会構造,歴史という視点から考察し,喪失の要因について社会の異なる捉え方が並存し,認知と感情の分断が広がり,そのために悲嘆の共鳴,分有が成り立ちにくくなっている(p97)と指摘し,悲嘆をともにすることが容易でなくなっていることにグリーフケアが求められる背景があると述べられている(p98)。
ニュースレター第177号(2019年1月号)コラム リビングwithグリーフ「墓じまい」を引用して意見交換をおこなった。https://www.griefwork.jp/news/news177.html
☆2020年度資格更新手続について☆(資格認定委員会より)
グリーフワークかがわ認定カウンセラー資格の2020年度資格更新作業の該当者12名に対して、12月20日以降資格更新手続き用の書類を発送しております。
手元に手続き書類が届いた方は、期間内に手続きをお願いします。
該当者:2019年度にGWK認定カウンセラーの資格を取得され,有効期限が2021年3月31日と記載された資格登録証をお持ちの方。
受付期間:2021年1月15日~2021年2月15日(当日消印有効)